日米通算4367安打のイチロー(マリナーズ)が球団の会長付特別補佐に就任した。ご同慶の至り、と言いたいところだが、残り試合には出場しない、という。つまり、事実上の戦力外通告だ。

 通常、ロースター(40人枠)から外れた場合、球団はウエーバー公示を行う。他球団からオファーがあれば移籍することができる。だが今回、球団はその手続きをとらなかった。どうやらイチローの意思を尊重したようだ。仮に他球団からオファーがなかった場合、イチローには練習場所がなくなる。「最低でも50歳まで現役を続けたい」と公言するイチローにとって、こうした状況は避けたい。引退を回避するため、「会長付特別補佐」を受け入れたと見ることもできる。

■東京ドーム興行やメジャーリーグ野球殿堂入りを見据えて

 マリナーズ側にもイチローに去られては困る事情があったようだ。来年3月20日、21日に東京ドームでアスレチックス相手に開幕2連戦を行う。通常25人のベンチ入りが、国外での試合では3人増える。“興行の顔”としてイチローを起用する腹づもりでは……との見方が消えないのは、そのためだ。

 引き留めの理由は、まだある。引退から5年が経過した元選手には米野球殿堂入りの資格が与えられる。メジャーリーグで通算3089本のヒットを記録しているイチローが殿堂入りすることは、まず間違いない。問題はどこの球団の帽子姿でレリーフにおさまるか、だ。「マリナーズがショックだったのは通算303勝のランディ・ジョンソンが殿堂入りに際し、ダイヤモンドバックスを選んだこと。球団別勝ち星はマ軍130であるのに対し、ダ軍118。イチローはヤンキースやマーリンズでもプレーしている。実績的にはマリナーズが一番だが“もしや”があるかもしれない。心証を害する契約は避けたかったのでは……」(MLB球団元職員)

 ウインウインとまではいかないが双方が互いの顔を立てつつソフトランディングをはかったのが異例の契約の真相。すなわち“おとなの決着”だったようだ。

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