推しアイドルが卒業!そのときヲタはどうなるか?の画像
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大森望の極楽アイドル沼 第1回

 このところ、女性アイドルグループの解散、人気メンバーのグループ脱退・卒業が相次いでいる。8月にチャオ ベッラ チンクェッティ、9月にPASSPO☆、ベイビーレイズJAPAN、ベボガ!、10月にバニラビーンズ、11月にX21がそれぞれ解散(予定含む)。乃木坂46の西野七瀬、欅坂46の米谷奈々未が、ともに年内でグループから卒業することを発表。BABYMETALのYUIMETAL(水野由結)も、昨年12月から長く活動を休んでいたが、去る10月19日、ついに脱退を発表した。

 というわけで、ずっと推してきたグループが解散したり、推しメンが卒業・脱退したとき、アイドルオタクはそれにどう対処するのか――というのが与えられたテーマ。アイドルをめぐる新連載の一発目にしては縁起が悪いと思うかもしれませんが、ドルヲタ生活には避けて通れない問題なのである。

 ちなみに、筆者の主現場であるハロプロ(HELLO! PROJECT)に関して言うと、円満卒業者(卒業後もアップフロント・グループの事務所に所属するメンバー)には、M-line clubという受け皿が用意されている。これはハロプロ卒業生のファンクラブで、ライブの先行予約や、会員専用のファンクラブイベント、ディナーショーその他のチケット購入ができる。

 いまをときめく真野恵里菜にしても、ハロプロ卒業生なので、「真野Friends Party」(真野ファンのことをマノフレと呼ぶ)と題するライブつきのFCイベントを定期的にやっているし、昨年解散した℃-uteのメンバー5人のうち、萩原舞を除く4人はM-lineに所属して単独イベントや合同イベントをやっているから、ハロプロを卒業したといっても、実態はあまり変わらない(東京でのライブの数は、解散前よりむしろ増えてるかも)。

 嗣永桃子のように、芸能界を完全引退するケースもあるが、残されたファンは、彼女が最後に在籍していたカントリー・ガールズの行く末を見届ける道を選んだり(ももちヲタで有名だったぱいぱいでか美さんのコース)、いちばん長く在籍したBerryz工房の曲を受け継ぐこぶしファクトリーやつばきファクトリーに流れたりする。

 とまあ、そんな具合に、ハロプロの場合は、しあわせな余生(?)を送れる道すじがシステム的に用意されているわけで、一度つかんだヲタはそうやすやすとは手放さない。さすが20年もやってるだけのことはあありますね。

 そういう余生が用意されていないアイドルのファンの場合は、他界(そのグループのファンであることを辞める)、ヲタ卒(アイドル・ファンであることを辞める)などの道を選ぶこともある。そもそも、これまで全人生をかけて推しを応援してきたヲタは、そう簡単に「推しの卒業」という現実を受容できるのか。

 エリザベス・キューブラー=ロスのベストセラー『死ぬ瞬間』は、死の受容のプロセスを5段階に分けているが、ここではその5段階を借りて、ドルヲタは「推しの卒業」をいかにして受容するかを考えてみた。

第1段階 「否認」

 まさか。ネタだろ。ソースは? ネット情報鵜呑みにするとかリテラシー低すぎ。だいたい、先週もブログで、死ぬまでアイドルやるって書いてたじゃん。いやいや。25歳定年とかないから。

第2段階 「怒り」

 いくらなんでも急すぎる! 年内で卒業って、あと何日もないじゃん。最低でも1年前に言わないと認められないね。無効。やりなおし。

第3段階 「取引」

 分かった、卒業は認める。でも芸能界引退とかないよね。ソロでやればいいじゃん。℃-uteの鈴木愛理とか、ソロでも武道館埋めてるし。アイルネの原田珠々華とかもソロでやってる。石野理子みたいに移籍してもいいよ。まあ、どうしてもっていうなら女優でもいいから。この際、道重さゆみや武藤彩未みたいに、1年か2年休んで復帰するのもあり。でも芸能界引退だけはやめて。ムリだから!

第4段階 「抑うつ」

 あーあ、おれの5年間がこんなにあっさり終わるのか。アイドルなんか応援しても何も残らないって、ほんとだよな。無駄無駄無駄。遠征費用とかグッズ代とかぜんぶ貯金してたらマンションの頭金になったのに。もうね、チェキもサイン入りCDもTシャツもパーカーもペンライトもぜんぶ捨てる。そっちが卒業するならこっちも卒業だ。きっぱりヲタ卒してやる。

第5段階 「受容」

 まあしかし、アイドルにもアイドルの人生があるんだよな。ときどき握手会でしゃべるだけの人間があれこれ言う筋合いじゃない。どこかで幸せになってくれればそれでいいよ。そもそもアイドルは彼女ひとりじゃないし。推しがいなくなったってことは、もうよりどりみどりじゃん! とりあえず、次が決まるまで対バンイベント行きまくるぞ!

 ……というコースをたどるかどうかはともかく、たいていのドルヲタは推しの卒業から1か月も経つと、別の現場に元気に通いはじめる。オタクの魂百まで。

大森望の極楽アイドル沼

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