■『まんぷく』は松坂慶子がいなければ凡作だった!?
鈴は笑いをとるコミカルさを持ちながらも、福子萬平夫妻を的確に叱咤する、名ツッコミとしても機能していた。もしも彼女がいなかったら、このドラマはちょっと変わった夫婦の成功譚か有名企業の伝記で終わってしまい、ここまで視聴者の共感を得られなかったのではないだろうか。視聴者目線で主役夫妻をぶった斬り、ドラマと視聴者との距離を近づけてくれた鈴の存在は、“ヒロインの母”という役割以上のものだった。
またヒロインの母が、ここまで出ずっぱりだったこともポイントだ。主人公が嫁いだり、地元を離れ活躍することが多い朝ドラにおいて、ヒロインの母がほぼ皆勤賞なのは異例だろう。今回の成功で、今後もこのスタイルがとられる可能性は十分にある。松坂慶子の名演が、朝ドラの“母親役”の地位を、さらに高めたといってもよいだろう。
残り1か月の放送となり、ついに萬平を認めた鈴。それでも、最後までヒロイン夫妻に厳しいツッコミを入れまくってほしい。1970年代に舞台が移っても鈴は見事に健在だったし、このまま最後まで武士の娘としてドラマを支えてくれるだろう。(朝ドラ批評家・半澤則吉)
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※画像はNHK『まんぷく』番組公式ホームページより