大鶴義丹
大鶴義丹

「お化け屋敷みたいでしょ?」

 いたずっらぽい笑顔でこう話すのは、俳優の大鶴義丹(51)。お化け屋敷と揶揄するのは、6月15~24日まで行われる舞台公演『蛇姫様 わが心の奈蛇』の稽古場だ。

 都内にあるこの稽古場は、周囲を墓地に囲まれたマンションの地下2階にある。テレビドラマに出てくる、混とんとした演劇の稽古場そのものなのだが、実はこの舞台そのものも、特別な場所で公演される。その場所は、新宿・花園神社の境内に特別に設営されたテントだ。

 そのため、外の“雑音”がテントの中までダイレクトに伝わってくるが、大鶴曰く、「それに負けないだけの演技力が必要」(大鶴、以下同)なのだという。

「新宿の道路って、女性の求人募集を賑やかにPRするトラックがガンガン走ってるんだよね。その中でやるわけだから。でもね、以前、役者の先輩に言われたんだけど、“お前は新宿のラブホの前で、女を口説いているとき、風俗求人募集のトラックが横を走って『高収入~♪』、なんて聞こえてきたら、口説くのをやめるのか?”と。確かに、やめないで頑張って口説くだろうなって納得しました(笑)」

 猥雑な環境でも、観客を引き込ませる演技力を必要とする花園神社での公演を、大鶴はもはや毎年の“恒例”として行っている。

 今年の舞台は、実は言葉で説明するのが難しい。

「話としてはけっこう、オドロオドロしい内容でね。簡単なあらすじを説明すると、朝鮮戦争が終わる頃、米軍の死体を九州まで運ぶ死体運搬船に紛れ込んだ女が、犯されるんだよね。それで産み落とした私生児が“あけび”という女の子で、体に蛇のウロコのような痣がついている。その彼女が自らの出自と痣を消す方法、そして真の愛情を求めて旅をするんですが、その過程でさまざまな事実を知っていくんだね。彼女の母親を犯したのは“蛇”で、その蛇とは、いったい何者なのか……」

 説明だけを聞くと華やかさは感じられないが、大鶴は「とにかく綺麗なストーリーではありませんよ。猥雑だし、暴力的だし、人間のあらゆる欲望が入り乱れています。ただ、その中にも“純愛”がある」と力強い。

 そして何より、テントでの舞台をぜひ経験してほしいと話す。

「テント舞台をぜひ体験してもらいたい。野外劇の醍醐味って、外界との区別がないところなんです。それこそテントの外からは日常の雑音が聞こえてくるんです。でも、テントの中では“非日常”の舞台が行われている。すると、非日常であるはずの物語がまるで自分の日常に溶け込んでいるような錯覚があるんです」

 大鶴が出演する舞台『蛇姫様 わが心の奈蛇』のチケットは5月7日からチケットぴあから発売される。非日常の舞台をぜひ体感してほしい!

あわせて読む:
・大鶴義丹「父・唐十郎に“飲み込まれてたまるか”って思いがあった」劇団に育てられた人間力
・大鶴義丹「勝負事で一番好きなのはカード!」麻美ゆまのあなたに会いたい!
・モンキー・パンチさん逝去。担当編集者が明かす、皆を引き込む「漫画への情熱」