■巨人愛は変わらず

 とはいえ、王氏が巨人を憎んでいるのかといえば、そうではない。「王さんは変わることのない“巨人愛”を持ち続けています。長らく巨人のOB会長を務めていましたし、今でも毎年12月のOB会には、必ず顔を出しますからね」(球界関係者)

 王氏の巨人愛がよく分かるのが、“サイン”だという。「王さんはホークスに行って“福岡の人”になってからは、サインを頼まれると“気力・王貞治”と書いています。そこに球団名は添えられません。対して、巨人時代は“巨人軍・王貞治”と書くことが多かった。やっぱり、王さんの“心の故郷”は今でも巨人なんですよ」(前同)

 そんな王氏が目を細めているのが、メジャーリーグで大活躍中のエンゼルス・大谷翔平(25)だという。高校3年生の大谷が春の選抜大会で、藤浪晋太郎(現・阪神)からホームランを打ったのをテレビ観戦していた王氏は、こう言ったとか。「彼は、僕のホームラン記録を塗り替えるバッターになるかもしれない」

 早くから大谷の才能を見抜いていた王氏。ただし、二刀流に対しては当初から懐疑的だったという。東京プロ野球記者OBクラブの集いに参加した際、王氏は、「僕の個人的な意見だけど、大谷にはバッター一本でやってほしいと思う。投手一本だと出ない日のほうが多いけど、これは実にもったいない。毎日出場してファンを喜ばせるには、バッター一本に絞るしかないよ」と力説したという。

 昨年10月に右肘の手術を受けたため、今季は打者専任となっている大谷。そのせいか、成績も好調だ。親しい古参記者が王氏に、「大谷は、やっぱりパワーがありますよね」と尋ねたことがあった。すると王氏は「違うよ」と遮って、こう続けたという。「彼の最大の武器はパワーではなくて、スイングスピード。スイングスピードが一番速くなるときにボールに当てられる能力があるから、メジャーリーガーの球でもホームランが打てるんだよ」

 天才は天才を知る――。王氏が喝破したように、アメリカでも、ここにきて大谷の打者専任論が沸騰している。二刀流にこだわる大谷が今後、どういう決断を下すのか注目したい。

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