阿部サダヲ
阿部サダヲ

 15.5%(ビデオリサーチ/関東地区調べ/以下同)。これは今年の大河ドラマいだてん~東京オリムピック噺~』初回の平均視聴率だ。民放プライムタイムの人気ドラマでも、この数字を取るのは難しい昨今の視聴率事情を考えると、『いだてん』に対して最初はかなり期待が高かったことが分かる。

 しかし、あれから1年近くが経過し、その評価は地にまで落ちてしまった。なんと視聴率は3%台も記録。1963年から半世紀以上の歴史を持つ大河ドラマで、史上最低の視聴率を記録してしまったのだ。ここではその理由とともに、波乱万丈すぎる『いだてん』の1年を振り返ってみたい。

『いだてん』が歴史的に低視聴率に終わってしまった最大の理由は、ズバリ「時代劇ではなかった」せいだ。役者の演技、脚本、展開などを議論する前に、まずはこれについて語っておきたい。大河ドラマ=時代劇、そう思い毎年楽しんでいた大河ファンがあっさり離れ、視聴率低下につながったのだ。過去にも近代に焦点を当てた作品はあったが、正直、低調だった。それにもかかわらず、近現代史に挑戦したNHKの勇気は評価したいが、残念ながら結果がついてこなかった。

 連続テレビ小説あまちゃん』で見事な成功を収めた宮藤官九郎(49)を脚本家に起用。前回の東京オリンピックを描くオリンピックドラマと、放送前はワクワクしか感じなかったドラマだけに、大河枠でなければ成功した可能性はあっただろう。

 しかし、このドラマの失敗はその設定だけでなく、運の悪さもあった。放送開始から3か月後に、ピエール瀧(52)の逮捕されてしまったことだ。瀧は前半戦の主役、金栗四三(中村勘九郎/38)と心を通わせる足袋職人、黒坂辛作役という重要な役を演じるはずだった。撮影済みのシーンは多かったがこの事件を受け、三宅弘城(51)に急遽キャスト変更。三宅も好演したが、役者として脂の乗っていた瀧の降板は、かなりのダメージだったはずだ。

 キャスト不祥事の不幸は、視聴率が底をついた後半戦にも重くのしかかった。オリンピック招致に成功し、さあいよいよクライマックスというところで、64年の東京五輪で活躍した女子バレーボールチームの日本代表監督、大松博文役、徳井義実(44)の所得隠しが発覚。世間を騒がせ、すわ降板かと思わせたが、結局は再編集のみで徳井の熱演が放映されることとなった。

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