伊藤健太郎
伊藤健太郎

 年が明けてから平均視聴率が20%に届かず、17%台も記録するなど、不調がささやかれているNHKの連続テレビ小説スカーレット』(ビデオリサーチ調べ/関東地区)。だが、ドラマ的にはこれからが山場で、視聴率アップの可能性も秘めている。最近は戸田恵梨香(31)が演じる喜美子と夫である八郎(松下洸平/32)の微妙な心のすれ違いが静かに描かれ、奥深いドラマとなっているが、今後の注目ポイントはどこになるのか。1月11日の放送を振り返り考えてみよう。

 喜美子は陶芸の展覧会に出展すべく、自身の作品作りに励む。喜美子が持つ陶芸の才能に気づいた八郎は嫉妬を感じるように。そんな中、八郎は弟子の美津(黒島結菜/22)に喜美子の才能のスゴさを語り、「喜美子に横におられんのはしんどいな」と本音を漏らすのだった。

 この回で衝撃的だったのは、アバンタイトルが4分もあったことだ。アバンタイトルとはオープニングテーマ前のプロローグのシーンだ。15分しかない朝ドラの場合、通常は1分から2分ぐらいなのだが、『スカーレット』はこのアバンタイトルを丁寧に作っているのが特徴だ。

 特に11日放送のアバンタイトルは、『スカーレット』の見どころを凝縮したものといえた。喜美子と八郎夫妻が静かに、それでも確かにぶつかり合う場面。八郎に反発した喜美子が、笑いながら作陶するシーンは見ものだった。見方によっては狂気的だが、こんな場面すら爽やかに、そしてコミカルに演じてみせる戸田恵梨香の演技力が光った。

 昨年10月スタートの『スカーレット』も折り返しを迎え、あらためて思うのは戸田恵梨香の演技力の高さだ。このアバンタイトルひとつとってもそうで、地味で静かな演技ながら、喜美子の悲喜こもごも、心の内を分かりやすく視聴者に伝えている。

  1. 1
  2. 2