■古き良き朝ドラの復活を!

 今回の再登場シーンでは荒木荘の回想がほぼなかったが、回想などなくても視聴者は若き日の喜美子を思い出し、彼女を見守ってきた人々の優しさをじんわりと胸に感じた。『スカーレット』は人それぞれのキャラクターに目がいく、セリフがしっかり聞こえてくるドラマだからだろう。派手なキャストが少なめで、一見、地味に見える配役だが、それが劇中の登場人物のキャラ立ちに貢献し、朝ドラの世界に没入させてくれた。昔の朝ドラを思い出させてくれる作品だったといえる。

 広瀬すず(21)主演の前作『なつぞら』、窪田正孝(31)と二階堂ふみ(25)が出演する次作『エール』は大河ドラマを超えるような重量級キャストだが、朝ドラがこんなに豪華になったのは最近の話だ。ひと昔前までの朝ドラはヒロインもオーディションで選び、ほかのキャストも地味な面々だったが、それらをうまく配して人生の機微や悲喜こもごもを紡いできた。豪華キャストが悪いわけではないが、『スカーレット』のように渋いキャストでも良作を作れるのもまた事実だ。残念ながら、この日の平均視聴率は19.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、20%台には届かなかったが、ドラマとしては最上の出来だった。

 筆者は朝ドラの次々作『おちょやん』の主演に杉咲花(22)が選ばれたことを喜んだ一人でもあるが、そろそろ2018年上半期『半分、青い。』の永野芽郁(20)以来のヒロインオーディション作も見てみたい。『スカーレット』神回でかいま見られた、地味だけど見事な「配役の妙」。ただの感動回でなく、古き良き朝ドラの美学を思い出させてくれる傑作回だった。(朝ドラ批評家・半澤則吉)

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※画像はNHK『スカーレット』番組公式ホームページより

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