着実な育成が花開こうとしている

 近年の川崎Fの躍進は、こうした下部組織での選手育成の充実が支えている。プロ3年目の脇坂泰斗も下部組織の出身で、阪南大学を経てクラブに戻ってきた。今季から背番号8を背負う。

 開幕スタメンとなり、4-3-3の新フォーメーションでアンカーを務めた田中碧は、U-18から昇格して3年目の昨季にブレイク。まだ20歳(当時)の若さで、第3節の横浜F・マリノス戦で先発出場すると、昨季はほぼレギュラー格として24試合に出場した。リーグ屈指のレベルの川崎Fの中盤で、若さに似合わぬ落ち着きぶりで自然にプレーしていること自体が驚きだった。東京五輪に臨む日本代表でも中心となるとみられている逸材だ。

 ともにトップチームでのプレー機会は少なかったが、期限付きながらベルギーのロイヤル・アントワープに移籍した三好康児、世界的名門マンチェスター・シティに引き抜かれてオランダで武者修行中の板倉滉(フローニンゲン)といった、世界に羽ばたく選手も育ててきた。

 三笘の1歳年上である2人は、クラブのU-12チームの1期生だ。Jリーグでは後発となった川崎Fだが、焦って才能のある子どもをかき集めるようなことはしなかった。まずはスクール立ち上げにとどめるなど、反発を買うことのないよう、時間をかけて地域と協力しながら下部組織の拡充と充実を図ってきた。その努力が、ついに花開いてきた格好だ。

 かつて川崎市の有望選手は、隣の横浜F・マリノスの下部組織に流れる傾向が強かった。川崎生まれながら、横浜FMで小学校時代から育てられてトップチームに昇格した齋藤学がその好例だろう。

 だが、時代は変わった。ここ数年のトップチームの活躍と地域密着度の高さに比例するように、下部組織の充実度もアップ。自前で育てた生え抜きたちが、新しい川崎Fの担い手になろうとしている。

 昨季にリーグ23試合出場7得点の阿部浩之(→名古屋グランパス)ら移籍していく選手も出たが、若い新加入選手はその穴を埋め得る存在だ。負傷で長期離脱中の中村憲剛はもちろん、そのバンディエラに続いて2017年、2018年とリーグMVPを3年連続で川崎Fにもたらした小林悠、家長昭博もベテランの域に入っていこうとしている。来季以降を見据えても、若手の台頭は欠かせない。

 ルヴァン杯の清水戦では5得点で大勝しながら、リーグ開幕戦では無得点で勝ち切れないなど、新フォーメーションにトライする今季の戦術浸透はまだ不十分だが、その分だけ伸びしろがあるとも言える。今年も優勝を争う力は十分にあるだろう。

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