『M 愛すべき人がいて』テレ朝本気の“大映ドラマ路線”成功のギョーカイ事情の画像
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 私は今、なにを見せられているのか。土曜夜11時15分から放送のドラマ『M愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)が、すさまじい。原作となった浜崎あゆみ(41)とMAX松浦こと松浦勝人氏(55)のエピソードは、あくまで「ダシ」。そのうえに好き勝手、アクの強い味つけをぶち込んだ創作料理が出されてびっくりという感じである。

 ツイッターやネットの記事ですでに話題になっている通り、全体的に思い出すのは『スチュワーデス物語』(TBS系)だ。超ダイコンのヒロイン、安斉かれん(20)は「ドジでのろまな亀」で一世を風靡した堀ちえみ(53)を、田中みな実(33)の眼帯秘書は片平なぎさ(60)を思い出す。そこに高嶋政伸(53)、高橋克典(55)という「芝居がかった芝居」が最高にうまいベテラン勢が脇を固め、トドメに家族の温かさを具現化したかのような市毛良枝(69)を投入。

 ヒロインを置いてけぼりにし、キャスト一丸となっていちいち大げさにドラマを盛り上げる、この“大映ドラマ感”をもう一度拝めるとは。つくづく感心するのが、テレビ朝日のオマージュのうまさだ。過去のヒットドラマのパターンを踏襲し、「ベタなお約束」に仕立てて視聴者のツボを刺激する。特に今期は『警視庁・捜査一課長2020』『家政夫のミタゾノ』と同じ路線が並んでいて、中高年のドラマファンにはたまらないラインナップになっている。

 マサとあゆの昼メロ臭もたまらないが、それもそのはず、プロデューサーが服部宣之氏。東海テレビで15年にわたり、ガッツリ昼メロに関わってきた方である。脚本の鈴木おさむ氏も、同じテレビ朝日系の金曜ナイトドラマで、ヒステリックな『奪い愛、冬』を経験済。制作陣が自ら歩んできたベッタベタ路線を、キャッキャ言いながらこのドラマにぶち込んでいるのだから、濃くなるのはある意味当然だ。

 ここまでこねくり回されると、浜崎あゆみと松浦氏のリアルなエピソードとのリンクはもはやどうでもよくなり、完全に別物として楽しめる。

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