■映画『キネマの天地』もハマり役だったはず

 今年は山田洋次監督(88)の最新映画『キネマの神様』に、菅田将暉(27)とのダブル主演が決まっていた。しかも無類のギャンブル好きのダメ親父という役柄で、これは志村さんのハマリ役となったはずだ。温かみがある演技で名を馳せたいかりや長介さんとはまた違う、志村さんならではのはっちゃけた演技で、俳優としてブレイクした可能性も大いにあった。

 志村けんさんは、大先輩の長さんを、俳優として超えられたかもしれない。『エール』の短い芝居で役にシンクロし、存在感を出しまくる姿を見ると、ついそんなことを夢想してしまう。そして『エール』で見せた役者魂の裏には、今後は俳優にも本気で挑戦したかったという野望が見え隠れして、その急逝がなおのこと切ない。

『キネマの神様』は代役が沢田研二(71)に決まったが、一方の『エール』は代役なしの方向と報道されている。これは制作陣の大英断ではないだろうか。ふてぶてしいがどこか憎めない小山田耕三は、志村さんでなくては困るのだ。もしもっと長く生きていたら……。毎日テレビを眺めながら思ってしまうが、この素晴らしい演技を、どうか最後まで噛み締めたいものだ。(朝ドラ批評家・半澤則吉)

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