■ヒット作ではないのになぜ?『Nのために』が愛されているワケ

 放送当時の平均視聴率は約9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とひとケタ台で、一般的にウケたヒット作とは言い難いが、登場人物たちの切ない恋模様と先の読めないミステリー要素、いまや全員が主演級となったキャスト陣の等身大の演技なども相まって、ドラマファンの間では名作との呼び声が高い。放送終了から6年が経った今でも、ネットの掲示板には定期的にスレッドが立ち、ファンの間で熱心に感想や議論が交わされるほどに“愛されている”作品なのだ。

 賀来が劇中で演じた安藤という男は、イケメンで要領のいい今どきの若者。しかし、次第に榮倉演じる杉下に恋心を抱くようになり、ささいな嫉妬心からある悲しい事件を引き起こしてしまう。最後まで真っすぐにヒロインを照らす太陽のようなキャラクターでありながら、その事件が二人の間に影を落とし続け、苦悩するという難しい役どころでもある。この作品こそ、今の『半沢~』にもつながる彼の“シリアス演技”の原点であるように思う。

 この作品は、賀来の私生活にも大きな影響を与えている。2016年8月、同作での共演をきっかけに賀来と榮倉がゴールイン。のちに「その時(=ドラマ共演時)も仲が良かったんですけど、終わってからもそのチームで飲み会をよくしていて。でもまさか結婚するとは思ってなかった」(フジテレビ系バラエティ番組 『ダウンタウンなう」』より)と馴れ初めを振り返っている。劇中には2人の貴重なキスシーンも含まれており、今見返すことによって“パラレルワールド”的な楽しみ方もできそうだ。

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