■バカ殿に出演して
上島 はい。僕が初めて会ったのは1996年の12月頭くらいだったから、もう23年以上も前。プロレスラーの川田利明さんが共通の知り合いで、電話で呼ばれて飲みに行ったら、そこに志村さんがいたんですよ。
渡辺 あっ、仕事が最初じゃなかったんだ?
上島 はい。そのとき、志村さんが「お前ら、最近はリアクション芸ばかりでコントをやってないよな。『志村けんのバカ殿様』(フジ系)に出てみるか?」と言ってくださって。さすがに社交辞令だろうけど、「バカ殿に関われるなら大喜びです!」って答えたんです。
渡辺 今も昔も人気番組だから、それはそうだよね。
上島 そしたら2週間後、本当に収録に呼ばれたんです。翌年1月放送される番組ですからね。普通、そんな急なことはないですよね。
寺門 そうそう。マネージャーから「バカ殿、決まりました!」って言われたときは、ビックリしたよなあ。
肥後 で、俺ら、バカ殿の命を狙う忍者の役をもらったんですけど、3分くらいのコントも披露したんです。
寺門 覚えてるな。そのときですよ。出番前の志村さんがカメラの位置からずっと僕たちを見てるんです!
上島 白塗りしたバカ殿の顔でね(笑)。でも、表情は超真剣で怖くて。
寺門 だからコント中、志村さんの反応ばかりが気になっちゃってね。
上島 でも、志村さんは喜んでくれて、その後、出演することができたんです。
肥後 そうしたらある日、バカ殿の家来が一人いなくなっちゃってね……(笑)。
寺門 田代まさしさんが……いろいろあってね(笑)。
上島 それで、一気に家来まで昇格したんです。
渡辺 へえ〜、そういう背景があって、志村さんとのつながりが強くなっていったのか。志村さんとのお酒は、どんな感じだった?
寺門 一番飲んだのは(上島)竜ちゃん。もう同志でしたよね。志村さんは、「俺のことを分かってくれる唯一のヤツ」って言ってたよね。
上島 いやいや。でも、出会った頃の志村さんは40代で、僕も若かったから、いつも朝まで飲んでました。そのままテレビに出ることもあったから、今思えば、酒臭くて腹を立てたスタッフもいたんだろうなあ。
寺門 いたよ、絶対(笑)。
上島 それでもホント、楽しかった。おいしいものを食べさせてもらったし、高級クラブに連れてってもらったし。ただ、それ以上に、「俺は今、あの志村けんと差し向かいで飲んでるんだ」と思うだけで、もうたまらなかった。
渡辺 分かる。俺も昔、志村さんと飲んだから。
寺門 どんな感じでした?
渡辺 う〜ん、酔ったことしか覚えてない(笑)。ダチョウと飲んでるときは、どんな話をしてたの?
寺門 志村さんは、ほとんど芸のことでしたね。
上島 そう。だから僕なんて怒られてばっかり。たとえば、「今日のお前の役は加藤(茶)さんも演じたんだ。あの場面で加藤さんはこうやったけど、お前は何もしなかったよな!」とか。いつも言われていました。
寺門 その点、肥後はまったく怒られなかった。
肥後 そうだったね。
上島 志村さんは、いろいろボケたいんですよ。そのためには的確なツッコミが必要なんだけど、肥後はそれができたんです。
渡辺 肥後はほんわかしてて、ガツンと行くタイプじゃないし、そこがまた合ったんだろうね。
上島 ですね。ある晩、志村さんと2人で飲んでたとき、志村さんがふんするおばあちゃんキャラ“ひとみ婆さん”に対する肥後のツッコミを褒めてくれたことがあったんです。僕も「さすがでしょ、うちのリーダーは!」とか言いながら、ずっと褒め続けた。そしたら志村さんの表情がどんどん変わって、しまいには怒鳴られましたよ。「ひとみ婆さんのネタは俺が面白いんだよ!」って(笑)。