■今だったら一発でパワハラ
ゆま「じゃあ、映画では描かれていない部分で……琴剣さんが現役の頃は、今の相撲部屋とは、また違いましたか?」
琴剣「全然違いますね。昔の相撲部屋について語ると、最初から“ピー音”ばかりになりますよ。言えないことが多すぎて(笑)」
ゆま「ええ~。興味あります。ちょっとだけ教えてくださいよ」
琴剣「まあ、とにかく今では考えられない理不尽なことが多かったです。これは相撲に限ったことではないけど、まず、稽古中に水は飲めない。特に相撲なんか大量の汗をかくのに、水でも飲もうとしたら“バカ野郎! なに飲んでんだよ”ってぶっ飛ばされます」
ゆま「死んじゃいますよ」
琴剣「失神しても、お構いなし。“こいつ、震えていますよ~”って。今から思えば完全な脱水症なのに、当時は脱水症という言葉すら知られていなかったです」
ゆま「ほんと、すごい……。今だったら、一発でパワハラと言われますよね。」
琴剣「昔は、忍耐と根性がすべてだったんです。当時は“うさぎ飛び”をやらされていましたからね」
ゆま「根性をつけるために?」
琴剣「はい。まあ、自分の現役の頃って親方や関取に戦争を経験された方も多かったんです。要は軍隊のノリ、という感じでしょうか。相撲の世界だけでなく、世の中全体が、そういうところがありましたからね」
ゆま「今の時代で良かった。とはいえ、今は今でコロナ禍とあって、大相撲も大変なんですよね」
琴剣「はい。今回の映画はコロナ前に撮影したんですが、ある意味、あの光景を残せてよかったです」
ゆま「あの光景?」
琴剣「国技館に“満員御礼”の幕が降りている光景です。もしかしたら、もう二度と見られないかもしれない、と思うと感慨深くも、寂しくなりますよね」
ゆま「収束すれば、きっとまた満員御礼の光景が見られると思います!」
琴剣「そうですね。その日のためにも“相撲道”の素晴らしさを、少しでも伝えていければと思います」
ゆま「今日は、ありがとうございました!」(おわり)
ことつるぎ・じゅんや 1960年7月6日、福岡県出身。中学卒業後の1976年春場所に佐渡ヶ嶽部屋から初土俵を踏んだ元力士。86年秋場所で引退。現役時代からスポーツ紙にイラストを掲載しており、引退後は漫画家の道へ。10月30日には自身がコーディネートプロデュースを務める映画『相撲道 サムライを継ぐ者たち』が公開予定。
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