■天ぷら屋のまかないメシから誕生

 恵もけっこう大食いだ。一人で食べるのではなかろうが、奈良吉野の笹八の柿の葉寿司もついで買いしている。本人は写っていないが、ドアップで撮っているところからして、天むすラブラブ感が伝わってくる。

 天むすを知らない人もいないだろうが、小海老天がぶち込まれたミニサイズのおにぎり。片手で食べられる手軽さが人気だ。特に地雷也は名古屋の至る所に店もあるから、テイクアウトをして、名古屋城や徳川園の庭先で包みを広げてもいい。

 今や名古屋めしに欠かせない存在だが、もともとは1950年代に三重県津市で誕生した天むす。津市の「めいふつ天むす 千寿」が発祥の店だ。そもそも天ぷら屋を営んでいた夫のまかない食だった。やがて常連客向けの裏メニューとして振る舞われ、あまりの評判のよさに、妻の水谷ヨネが「天むす一本で勝負していこう」と思い立つ。なぜ名物でなく“めいふつ”かというと、必ずこれを名物に育てるとのヨネの決意の表れで、あえて濁点を取って名づけたそうな。そして、同店から暖簾分けしたのが「名古屋 千寿」。

 そして、千寿と並び二巨頭と言われるのが「地雷也」だ。86年にサカエチカにオープンし、愛知にとどまらず今では東京・江東区にも工場を持ち、都内でも購入できるというわけ。

 双方とも主にアカシャエビという小海老を用い、尾を取った状態で揚げてある。そして、きゃらぶきが付くのが定番。どうも発案者のヨネが沢庵嫌いだったからという、付け合わせのチョイスらしい。軽めのおにぎりとしょっぱい佃煮の、この組み合わせが最強なのだ。

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