■上半期ドラマも涙が魅力的だった

「20年のドラマだと、4~6月に放送していた『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)の中村も素晴らしかった。タイトル通り、中村は美食家の探偵・明智を演じていましたが、助手の小林苺(小芝風花)が目の前で致死性のトリカブトを注射されてしまう場面で、中村はこれまで隠していた苺への思いを叫ぶんです。『恋あた』と違い、動揺している間も上品さが出ていて、演じ分けの妙を感じましたね」(前出の女性誌記者)

 明智は、「ちくわの磯部揚げだ……」「ほんのささやかな、つつましい食事であっても。この日まで生きててよかったと思うことがある。こんなボクでも、生きていていいんだと……」

 と、かつての絶望ばかりの人生で、苺が作ってくれた料理が心を救ってくれたことを明かし、

「生きることは食べることだ! 食べることで生きる希望が生まれる! それをいつも全身で示してくれていたのが……この人だった!」

 と、涙ながらに毒を注射したマリア(小池栄子)に訴えかけたのである。

「上半期の『明智五郎』と下半期の『恋あた』の2作でどちらも美しい涙を披露したことになりますね。しかし、中村の泣き顔が際立ってよかったのは、やはり12月4日公開の映画『サイレント・トーキョー』ではないでしょうか」(映画ライター)

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