■救いはキャスティングだけか…
碧と空は、菅野美穂と浜辺美波だからとりあえず許せるものの、ものすごく無自覚に周りを振り回す厄介な親子である。トヨエツも然り。トヨエツだから許せるものの、焚火シーンでの説得力ゼロの長ぜりふやダンスのくだりは、役者を間違えれば南極レベルの寒さとなったはず。そう思うと、キャスティングは大成功だといえる。
後半になるにつれ、ストーリーがだんだんと散らばってきているので、よけい役よりも俳優そのものを見てしまう『ウチカレ』。編集者・漱石の「サリー、幸せになれよ」と寝言(?)でつぶやくシーンは、要らぬ世話ながら「中の人」の[Alexandros]川上洋平(38)に勝手に同情してしまった。ものすごく難しいし、照れくさかっただろうなあ、あのシーン。本当に要らぬ世話なのだが。
ただ、川上洋平の俳優としての急成長は、うれしい誤算。回を追うごとにぐんぐん魅力的になっている。光役の岡田健史(21)と川上の輝きが増す姿をリアルタイムで確認できるのが、最大の見どころだ。(田中稲)