小学生の頃、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』を読んで以来、僕は「冒険」に取りつかれました。
フィクション、ノンフィクション問わず冒険の本を読みまくり、自分でも世界中で“冒険ごっこ”にいそしみました。冒険について書かれた本を読んでいると、どうしても実際に行ってみたくなる。だからチャンスがあると、大喜びで行くわけです。結果的に、“ごっこ”からは、少しはみ出すような体験になったこともありましたね。
以前、カナダの北極圏に近い辺りへ、イッカククジラを撮影しに行ったことがありました。
1本の長い角が生えているクジラで、大きなもので体長が6メートルほどある。この海獣を撮ろうと何か月も粘っている人もいる中、僕は、行って3日目にイッカククジラのファミリーに出会えたんです。いやぁ、興奮しましたね。
現地で暮らすイヌイットの人々は、これを食料にします。彼らが仕留めたイッカククジラを海岸キャンプでごちそうになりました。彼らは肉じゃなくて皮を海水で煮るんですが、これがもう、実にうまかった!
実際にこの身を運んで、その土地で暮らす人々に会うことは、とてつもなく素晴らしいことです。
僕は冒険もの好きであるとともに、「漂流記マニア」でもあります。大海原に船で漕ぎ出した人が――その多くは楽しい海の旅のつもりで出かけたわけですけど――何らかの事情で……たとえばクジラと衝突したりして漂流することになる。
そのときに所持していたモノと、海で手に入れたモノで、彼らは生き抜く。その経験が書かれた漂流記を読むと、これは生きるために必要不可欠な「食う」ことの経験記でもあると感じるんです。
このたび、我が家に膨大にある漂流記を改めて読み直して、「食う」に焦点を当ててあれこれ書いたものが、本になりました。