■松潤や相葉の座った席

 その音頭取りをする名門校、女子学院の出身者に高校生時分、「当時半ドンだった土曜の放課後などに使った」との証言を受け、ぼくも数年前に初めて訪ねたのだ。いちおうは取材目的だと話すと、マスターは常連の芸能人の名を立て板に水といった調子で上げた。『嵐にしやがれ』の話も出て、「ファンが松潤や相葉ちゃんが座った席を予約したい」と言ってくるのだと笑った。

■看板は「牛肉の薄切りステーキ」

 1977年創業の「ラ・タベルナ」の店内には、子ども心にも鮮明だった、昭和のイタリアン色が溢れている。青山の「ハンター ラ ストラーダ」とか、新橋に唯一残る「ニコラス」、自由が丘や江古田やひばりヶ丘店が健在な「パンコントマテ」といった、レトロなイタ飯しかどうもぼくは受け付けない性分。だから「ラ・タベルナ」にも入った途端に和んだ。

「ラ・タベルナ」の数あるメニューの中でも看板は「牛肉の薄切りステーキ」(ランチ1100円、ディナー1300円。これがステーキと称するわりに、付け合せの存在感の方がデカいのだ。

 ターメリックがぷんと香るバターライスと、乾燥バジリコをまぶした炒めスパゲッティという、炭水化物+炭水化物の組み合わせで攻めてくる。その上に2枚乗った肉もハラミをしっかり叩いて伸ばしきっているので、ぐでぐでに柔らかい。

 ちょっとチープでレバー風味さえする。ニンニクたっぷりの醤油風味のタレの、どこがイタリアン?と首を傾げつつも、ライスをすくうスプーンが、麺を絡めるフォークが止まらない。

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