もともと高級店が居並ぶ街だが、庶民的な店もほどほどあって、「洋食屋 大越」などは森公美子ら芸能界にもファンが多い。よく出前を頼む中華店「那須飯店」もあって、そこは代々、麻布高校の生徒らの行きつけだった。

■『あべちゃん』での目撃談

 駅のなかった街なのに十番にはロータリーがあり、住民らの憩いの場所だった。准一もよく「コーヒーを買って、そこで座って飲んで」いたという。

「『モンタボー』の牛乳パンとか、昔はよく食べてましたね。最近は食べてないなあ。焼き鳥屋の『あべちゃん』にもよく行ってました。志茂田景樹さんか僕が、よく目撃されていた場所だと思います」

 1977年創業のモンタボーは全国に約70店舗を展開するチェーンだが、本店は十番にあり、96年発売のロングセラー「究極の北海道牛乳パン」は芸能人、文化人にもファンの多い看板商品だ。

 志茂田は十番に事務所を構えており、武蔵境(以下、境)にある自宅までは徒歩で帰宅するそうだ。なんでも、志茂田は「あべちゃん」の隣の大衆酒場「山忠」のほうに、もっぱら入り浸っていると聞く。

 准一の牛乳パン好きも、クールな見た目とは裏腹の気さくさを表すが、それよりあべちゃんだ。准一は焼き鳥屋と呼ぶが、正確には焼きとん屋である。十番といえば、志村けんが長年住んだ街。その志村も40年通い詰めていたのがこの店なのだ。

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