鈴木大介(撮影・弦巻勝)
鈴木大介(撮影・弦巻勝)

 私の「大介」という名前は、師匠の大内延介九段の「大」と「介」を取って、つけられたものです。

 もともと父が、師匠の後援会に入るほどの将棋好きで、子どもの頃から、プロの棋士になることを勧められていました。私も、それが当たり前のことだと思っていました。

 だから、小学4年生で本格的にプロを目指してからは、毎日猛特訓。1日10時間、学校と睡眠以外の時間は将棋の勉強に充てていました。将棋の本を100冊以上読破して棋譜を覚えたり、数多くの詰将棋を解いたり、道場に通ったり……。そのかいあって、小6のときに小学生将棋名人戦で優勝。プロ棋士養成機関の奨励会に入り、大内九段の弟子になりました。

 ただ、初段になるまでは早かったんですが、思春期を迎えて、将棋の勉強がおろそかになりまして……。ずっと義務のようにやってきたツケなのか、「このまま将棋を続けていいのだろうか?」と、人生の壁にぶち当たった感じでした。

 その頃に出合ったのが、麻雀です。将棋よりも没頭して、「20年間無敗」の伝説を残した桜井章一さんが主宰する「雀鬼会」に入り、毎日のように麻雀をしていました。「雀鬼会」は、麻雀を通して人間力を鍛えることを目的とした組織。桜井さんからは、麻雀そのものよりも、人としての生き方全般を厳しく指導してもらいました。

 結局、奨励会に入ってから8年、20歳のときに四段に昇段して、プロの棋士になることができましたが、雀鬼会で過ごした10代の日々は、将棋にも大きな影響を与えています。

 だから、私には、大内九段と桜井さんという、人生の師匠が二人いる。お二人には勝負の世界で生き抜くために大切なことをたくさん学びましたが、大きな共通点は「常に個性を出して、全力を尽くす」ということ。

 たとえば、大内九段には「自分だけの“将棋道”を作れ」とよく言われましたし、桜井さん率いる雀鬼会では、自分を貫き、正々堂々と戦わなければいけません。

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