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【武豊】馬も人も力を出し切ったレース

[週刊大衆11月10日号]

ボートレース戸田
https://www.boatrace-toda.jp/
GⅢ 戸田マスターズリーグ第10戦・週刊大衆杯

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
馬も人も力を出し切ったレース



リーグ戦2位に終わった阪神タイガースが、クライマックスシリーズで宿敵・巨人に4連勝。9年ぶりに日本シリーズへの切符を手にしました。

関西生まれ関西育ちの僕は根っからのタイガース・ファン。一昨年、誘導馬に乗って入場し、始球式を務めさせていただいたオリックス・バッファローズとともに、毎年、チームの成績に一喜一憂しています。

今年はそのオリックスにもチャンスがあり、「もし阪神とオリックスが日本一を懸けて闘うことになったらどっちを応援しよう」と、本気で心配していたほどでした(笑)。

僕の中で思い描く〝夢の対決〞は、来年以降に持ち越しとなりましたが、今年はタイガースの優勝を祈りつつ、ファンの皆さんと同じ目線で、ピッチャーの投げる一球が、わずか数センチのプレーが、勝負の明暗を分ける野球を愉しもうと思っています。

でも――。野球もいいけど、それよりさらに面白いのが、競馬です。
勝つと負けるのとでは大違い。2000メートルの距離をわずか1分57秒2で駆け抜け、それでも、どっちが勝ったかわからず、乗っている僕自身が、天に祈るような気持ちで写真判定の結果を待つ――そんな、痺(しび)れるような感覚を味わえるのは競馬だけ。これほど愉しいものはありません。

あれは、2008年11月2日に行われた第138回「天皇賞(秋)」でした。
最後の直線、逃げるダイワスカーレットに3強の一角、ディープスカイが外から襲いかかり、僕とウオッカはさらにその外を強襲。

一旦はかわしたはずのダイワスカーレットがそこからもう一度伸び、ウオッカが再び並びかける――歴史に残る名勝負は、内と外、ほとんど並んだところがゴールでした。

あのときは、正直、「同着かな」と思っていたのですが、検量室に戻ってみるとダイワが1着の枠場に入っていて、周りの空気もダイワ有利に傾いていくのがわかりました。
長い長い写真判定そして掲示板に…

十数分に及ぶ長い写真判定……あのときほど、時間が長く感じられたことはありません。生きた心地がしないというのは、ああいうことを言うのでしょう。

そして――着順掲示板にウオッカの馬番14が灯(とも)ったその瞬間、僕は大きく手を叩き、思わずガッツポーズをしていました。
強い馬が、その力を最後の一滴まで出し切れば、こういうレースになる。This is KEIBA――競馬の真髄をあらためて思い知らされたようなレースでした。

勝ったから言うのではありません。たとえ負けていたとしても、きっと同じことを言います。あのときのレース、「天皇賞(秋)」は、今でも僕の誇りです。

ヒットザターゲットととも挑む、11月2日の「天皇賞(秋)」。そして、翌3日(盛岡競馬場)にコパノリチャードで参戦する「JBCスプリント」。どちらも、最善を尽くし、競馬の神様に愛されるようなレースをしたいと思います。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】馬も人も力を出し切ったレース

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