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韓国人が知らない「セウォル号事件の真実」

[週刊大衆12月15日号]

300名もの犠牲者を出した事故には隣国が抱える、構造的欠陥があった! 真実に迫る人物の肉声を誌上公開する。

「事故発生から7か月以上が経つのに、真相は解明されるどころか深まる一方です。このままでは、韓国は立ち直れません」
11月27日に出版された『セウォル号の「真実」』(竹書房刊)の著者、郭東起氏はこう語る。
工業系では韓国最高峰に位置するKAIST大学を卒業し、現在は民間シンクタンクに研究員として身を置く郭氏は、4月16日のセウォル号沈没事故発生直後から、遺族団体などと協力しながら真相解明に取り組んできた。
この間、韓国では真相解明のための特別法を巡って与野党の政争が続き、10月末にようやく成立した。

その一方で、11月11日、光州地裁が一審宣告公判で、乗客を見殺しにしたイ・ジュンソク船長らセウォル号船員15人に対して懲役36年などの判決を下した。
「どちらの動きも真相解明につながるものではありません。事故の裏には、政府高官を巻き込む疑惑や謎が渦巻いています。それも、一つや二つではない。だからこそ特別法が必要なのですが、政争の中で実効性が弱められてしまった。船長たちに対する裁判は、韓国民に対する"目くらまし"のようなものです」(前同)

セウォル号沈没事故を巡る謎とは、どのようなものなのか。『セウォル号~』で列挙されたものの中から、一部を抜粋してみよう。
〈5月15日、韓国の捜査当局は事故の原因について、「ムリな改造で、復元力が低下していたセウォル号を船員たちが急変進させたことによって船体の貨物が一方に偏り、バランスを失って沈没した」との見解を発表した。しかし、ほかの政府機関による分析や操舵手の証言では、船は急変進していない〉
〈捜査当局は、しっかり固定されていなかった貨物が動いたことで船が大きく傾き、沈没に至ったとしている。しかし実際には、船は貨物が動く前に大きく傾いていたとする生存者の証言が多数ある――〉

こうした疑問に関する記述は、豊富なデータと証言に裏付けられて客観的であり、信憑性もある。
長さ100メートルの怪物体が接近

その一方で、次のような内容もある。
〈船が傾く前、船体に大きな「衝撃」が走ったという乗員乗客の証言がある。また救助船の到着前、沈みゆくセウォル号のすぐ近くに長さ100メートルほどの「怪物体」が突然現れ、間もなく消えたのをレーダーが捉えている。その正体は何なのか――〉
特に「怪物体」については、「韓国軍との合同演習に参加していた米軍の原潜ではないか」との説が、ネットなどで噂された。

一見すると、根拠の弱い陰謀論のようにも見える。
『セウォル号~』でも、郭氏はこの説についての判断を保留しているが、かといって荒唐無稽な絵空事として斬り捨てたわけでもない。
「なぜなら、捜査当局の主張こそが最もいい加減なものだからです。彼らは、船がバランスを崩して沈没したと分析した根拠について、具体的な数値や条件を公開しようとしない。検証不能な主張を事実と認めるわけにはいかず、したがって事故原因については様々な見方が残るんです。当局はまた、事故の当日には被疑者として警察署に留置すべき船長と船員らを、捜査幹部の自宅やホテルに泊めるという前代未聞の行動を取った。被疑者たちは、いくらでも口裏を合わせることが可能だったわけなんです」(前出・郭氏)

この"異常事態"に郭氏は憤りながら、事態のさらなる謎について解説する。
「さらにおかしいのは、セウォル号が事故の際に国家情報院に直接連絡するマニュアルを備えていたことです。国家情報院はスパイやテロ事件を扱う諜報機関であり、船舶事故の救難体系とは無縁の存在。旅客船がそんな組織と連絡を取り合うなど、普通なら考えられない。こんな事実が重なれば、韓国国民が"陰謀"の存在を疑うのは、むしろ当然でしょう」(前同)

冒頭で郭氏も述べているとおり、セウォル号沈没にまつわる疑惑は、初めて提起されたわけではない。
遺族団体を支援する弁護士グループは5月末、旅客船の運航管理や救難態勢の不備、海運業界と政官の癒着、事故後の不透明な捜査過程など、約100項目にも及ぶ「疑惑リスト」を報告書にまとめている。
私も取材の手掛かりを求めてこの報告書を入手したが、あまりに内容が幅広く、全容を把握するのに数日を要したほどだ。
しかも、『セウォル号~』で提起された疑惑の多くは、この報告書がまとめられた後、新たに暴き出されたものなのである。
その様を見守る遺族たちは、疑惑の渦に飲み込まれるような気持ちだったに違いない。
韓国で産経新聞の記事が絶賛

今年8月中旬、韓国・安山市を訪れた。セウォル号に修学旅行のために乗り込み、260人以上の生徒や教師らが犠牲となった檀園高校の地元だ。そこで聞いた遺族団体関係者の言葉に、私は思わず耳を疑った。
「日本の産経新聞は"あの記事"をよく書いたと思いますよ」
関係者の言う"あの記事"とは、8月3日付の同紙電子版に掲載された加藤達也ソウル支局長(当時)のコラムのことだ。
沈没事故の当日、朴槿恵大統領が7時間にわたり所在不明となり、その間に「男性と密会していたのでは」と匂わせたことが問題視された。その後、加藤氏を韓国検察が刑事訴追。11月27日にソウル中央地裁で開かれた初公判において、加藤氏は「独身の大統領についての男女関係の報道が名誉棄損にあたるか疑問」として容疑を否認した。

韓国人の間でも、検察の行き過ぎを指摘する声は少なくない。それでも、「記事の内容は別として」など、前置きするのが普通だ。産経新聞への手放しとも言える遺族団体関係者の"称賛"は、政府に対する強烈な不信感の表れに他ならない。
「あの団地では、同じ棟の20人近い子どもたちが亡くなりました。あっちの町内でも、同じぐらいの犠牲者が出ています……」
関係者は街を案内しながら、声を絞り出すように言った。同時に子どもを失った数百人の親たちが、毎日顔を合わせながら暮らす街の沈鬱さは、なんとも言い表し難いものがあった。関係者は語気を強め、続けた。
「疑惑について"根拠がない"と言うなら、政府は堂々と事実を明かせば良いんです。それをせずに言論を力で抑え込むのは、知られてはマズイことがあるからでしょう。こうなってしまった以上、政府など信じることはできない。だからこそ我々は"特別法"を求めているんです」

遺族たちの求めてきた"特別法"とは、民間の専門家が参加する委員会に強力な捜査権と起訴権を付与し、「聖域なき捜査」を行わせようというものだ。
民間に起訴権まで与えた事例は過去になく、政府与党だけでなく保守系のメディア、市民団体などが強く反発。一部では遺族に対する同情心まで吹き飛び、非難の言葉が飛び交った。

唖然とさせられたのは、特別法制定を求めてハンガーストライキを行う遺族代表の目前で、数十人でフライドチキンやピザを貪り食った右翼系の若者グループのパフォーマンスである。
その様子が報道されるや、良識ある人々が怒りを爆発させたのは言うまでもない。
韓国社会はセウォル号事件を受けて、分裂の危機に瀕していると言っても過言ではない状況にある。
「それでも国民の大部分は、事故の真相を解明することで襟を正そうと考えています。事故の背景に、"無責任さ"という韓国社会の構造的問題があったのは明らか。それを直視し、乗客たちの犠牲をより良い国作りにつなげなければならない。しかしながら、韓国の保守的な指導者層は、自分たちの既得権を守ることに汲々とし、事実を隠蔽している。自分で自分の体にメスを入れることを、拒否しているんです」(郭氏)

だが結局のところ、特別法は政府与党に押し切られる形で骨抜きとなり、遺族の望む「聖域なき捜査」は遠のいてしまった。
韓国は、このまま自浄作用が働かないまま、国ごと沈んでしまうのだろうか。
「遺族も私たちも、真相解明が短期間でできるものとは考えていません。韓国では子育ての環境が厳しいために少子化が進み、事故で犠牲になった高校生にも一人っ子が多かった。その親御さんたちは、"子どもの進学や結婚のために使うはずだったお金を、これからは真相解明のために使っていく"と決意しています」(前同)

権力の卑劣な圧力に屈することなく、遺族らがいつか真実をつかみ取ることを願いたい。

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