300名もの犠牲者を出した事故には隣国が抱える、構造的欠陥があった! 真実に迫る人物の肉声を誌上公開する。

「事故発生から7か月以上が経つのに、真相は解明されるどころか深まる一方です。このままでは、韓国は立ち直れません」
11月27日に出版された『セウォル号の「真実」』(竹書房刊)の著者、郭東起氏はこう語る。
工業系では韓国最高峰に位置するKAIST大学を卒業し、現在は民間シンクタンクに研究員として身を置く郭氏は、4月16日のセウォル号沈没事故発生直後から、遺族団体などと協力しながら真相解明に取り組んできた。
この間、韓国では真相解明のための特別法を巡って与野党の政争が続き、10月末にようやく成立した。

その一方で、11月11日、光州地裁が一審宣告公判で、乗客を見殺しにしたイ・ジュンソク船長らセウォル号船員15人に対して懲役36年などの判決を下した。
「どちらの動きも真相解明につながるものではありません。事故の裏には、政府高官を巻き込む疑惑や謎が渦巻いています。それも、一つや二つではない。だからこそ特別法が必要なのですが、政争の中で実効性が弱められてしまった。船長たちに対する裁判は、韓国民に対する"目くらまし"のようなものです」(前同)

セウォル号沈没事故を巡る謎とは、どのようなものなのか。『セウォル号~』で列挙されたものの中から、一部を抜粋してみよう。
〈5月15日、韓国の捜査当局は事故の原因について、「ムリな改造で、復元力が低下していたセウォル号を船員たちが急変進させたことによって船体の貨物が一方に偏り、バランスを失って沈没した」との見解を発表した。しかし、ほかの政府機関による分析や操舵手の証言では、船は急変進していない〉
〈捜査当局は、しっかり固定されていなかった貨物が動いたことで船が大きく傾き、沈没に至ったとしている。しかし実際には、船は貨物が動く前に大きく傾いていたとする生存者の証言が多数ある――〉

こうした疑問に関する記述は、豊富なデータと証言に裏付けられて客観的であり、信憑性もある。

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