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親の認知症 慌てないための「20の備え」

[週刊大衆04月13日号]

ただの老化現象と侮っているうちにじわじわと症状は悪化。家族の幸せのためにも早めの対策がカギを握る。

「なんとなく様子がおかしいけど、もしや認知症!?」
70~80代の親を持つ中高年世代なら、老化した親の行動に、ギクリとした人も多いのではなかろうか。

「認知症の患者数は現在、約460万人で、65歳以上の7人に1人程度の割合。75歳以上になると、その数は急増するため、社会の高齢化に伴い、10年後には5人に1人、約675万人になる見通しです」(医療ジャーナリスト)

忙しさにかまけて、親の異変に見て見ぬふりをしがちだが、それが症状を悪化させてしまうという。
「認知症の完治法はまだありませんが、早期発見で進行を遅らせることは可能です。早めの診断、対処が重要です」(同)

そこで本誌は、親が認知症になったときに知っておくべきことを徹底調査。慌てないための重要事項20をリストアップした。
まずは、自分の親が認知症かどうかを見分けるためのポイントから。
(1)急に怒りっぽくなった、 (2)食事や入浴などの体験そのものを忘れてしまう、 (3)同じことを何度も聞く、などは認知症の典型例と心がけよう。

「怒りっぽくなるのは、自分の判断力低下にイライラする結果。また単なる物忘れでは、何を食べたかを忘れても、食事したこと自体を忘れることはありません。同じことを何度も聞くのも、"返答された"という記憶をそっくり失っているためです」(認知症専門医)
だが、こうした特徴から認知症だと判断しても、ストレートに指摘してはダメ。
「年老いた親がトイレの場所を間違えたり、洋服箪笥(だんす)に食品をしまうなどしても、(4)失敗を叱ったり、大声で騒ぎ立てないこと。認知症の初期は本人も記憶が薄れていく自覚があり、落ち込んでいます。それなのに叱ったりしたら本人のプライドはズタズタです」(前同)

また、
「(5)間違ったことを言っても、訂正しないでください。否定されたことがストレスとなり、余計に混乱させますし、症状の進行を早めることにもなり得ます」(同)
たとえば、すでに食事をしているのに催促された場合は、"さっき食べたでしょう"ではなく、"すぐ作るから"と優しく受け流すのが正解とのことだ。

さらに、会話の際には、(6)情報を一つずつ伝える配慮が必要だ。
「寝室で着替えてほしい場合は、"寝室に行きましょう"と連れて行き、寝室に着いてから"着替えましょう"と声をかけてください。認知症になると、複数の内容を一度に理解することが難しくなるんです」(同)

では、症状が見られた場合、本人を受診させるにはどうすればよいのか。
これも、"認知症らしいから"という理由では本人を傷つけかねない。さらに、受診拒否されると、その間にも症状が進んでしまう。
『光嶋法務・経営コンサルティング事務所』(東京都新宿区)代表で、社労士・フィナンシャルプランナーでもある光嶋卓也氏は、本人の抵抗の少ない(7)物忘れ外来(認知症外来)の利用を勧める。
「"精神科""神経科"などの看板が掛かっているところでは、本人も"何で!?"となりがちですから。受診を勧める際も、"最近、定期健診してる?"などと抵抗のない話から入り、本人が"行ってない"というと、"じゃあ、今度自分がいい病院知っているから"などと導く工夫も大切です」

さて、受診の結果、認知症と診断されたら、(8)介護保険を申請しよう。
介護保険は、認知症や寝たきりなどで介護が必要な高齢者(65歳以上)に対し、住み慣れた場所で暮らせるように、40歳以上の人が保険料を出し合う制度。本人は1割負担で済む。
「記憶障害などがあっても、認知症初期には食事、歩行、入浴など生活面で自立できている方もいます。しかし、残念ながら認知症は次第に進行します。実際に介護が必要になったら、慌てず、また不利益を被らないように、早めに申請しておきたいですね」(光嶋氏)

実際に、認知症高齢者の約3人に2人が介護保険を利用しており、その数約280万人(10年度。厚労省統計)。申請は本人の最寄りの自治体の『地域包括支援センター』(『熟年相談室』など別名のことも)へ。むろん、家族が代理で申し込んでもいい。
「介護保険申請時には、適正な認定を受けられるように努めましょう。というのも、認知症の進み具合によって要支援1から2、要介護1から5まで7段階のランクがありますが、認定基準は案外厳しいんです」(前出の医療ジャーナリスト)

1番ランクの低い要支援1だと利用限度額は月に約5万円(自己負担額は約5000円)。最高ランクの要介護5だと約36万円(同・約3万6000円)。ランクが1つ上がるたびに、約5万円の差がつく。
デイサービスで介護負担軽減

そこで、日頃から(9)近所のかかりつけ医と仲良くしておきたい。
「認定するうえで主治医の"意見書"は重要です。日頃つきあいのある医師が認知症の専門でなくても、推薦状を書いて良い専門医を紹介してもらえるからです」
こう解説するのは、訪問介護を行う『ケアサポートぱんだ』(東京都江戸川区)の課長で、介護事情全般に詳しい帆角利恵氏。
さらに、
「お金の計算ができず、自分一人で買い物ができない状態というと、要介護4以上というのが一般の方の実感かもしれません。しかし、ほぼ寝たきりでなければ、4以上は認定されません」

加えて、(10)本人審査の際、正直に答えるように事前に家族から本人によく伝えておくことをアドバイスする。
審査の場には家族が立ち会うと、さらに良い。
「医者の"意見書"などを基に、専門家が訪問調査を行います。その際、本人がプライドから必要以上に大丈夫とアピールするケースが少なくありません。長年一人暮らししてきた男性ほど、その傾向が強いですね」

これらの注意点を守って、"要介護"と認定を受けると、(11)居宅介護支援事業者に、ケアプランの作成を依頼するという流れとなる。
「ケアプランとは1か月分の介護サービスの利用予定表のこと。居宅介護支援事業者は自由に選べるので、家の近所の会社を選択すると便利です。作成費用は全額、介護保険料から支払われるので無料です」

この際、ケアプランの作成を担当する(12)ケアマネージャーと親しくなることが重要だという。
「ケアマネージャーは介護の専門家で、最寄りの自治体(地域包括支援センター)、介護サービス業者との連絡調整役でもあります。親身になって相談に乗ってくれれば、これほど心強い味方はいません。逆に言えば、余り熱心でなかったり、相性が悪ければ心もとない。その場合は、行政の担当窓口に相談すれば、契約をしてからでも、替えてもらうこともできます」

また、(13)福祉用具貸与サービスも利用しよう。
「介護保険の対象は介護サービスだけではありません。認知症老人徘徊感知機器、車イス、自動排泄処理装置、入浴用リフト、さらに(工事を伴わない)手すりやスロープなども安価で貸してくれます」

また、(14)介護保険の対象となる認知症専門のサービスもあるので必要に応じ、最大限利用したい。
なかでも、帆角氏は、
「日中に介護施設に通う(15)デイ(ケア)サービスはできるだけ利用すべき」
と言う。
これらは、どのくらい費用がかかるのか。ここで具体的なケースを見てみよう。
家族内で後見人を決めておく

A男さん(77歳・妻は死去)は、息子夫婦(妻は専業主婦)、中・高校生の孫2人と同居しているが、平日の週5日、昼間は近所の介護老人保健施設に通い、機能訓練を受けている。
1回約1万円(6~8時間未満)だから、月20回として計約20万円。もっとも、要介護度3のA男さんの月利用限度額は約27万円だから、すべて介護保険で賄え、自己負担は1割の約2万円で済む。

「A男さんのように、平日すべてデイケアを受けているのは、奥さんなど介護を支える家族のストレスを軽くする狙いもあります。また、特に独居のケースでは外に多く出ればそれだけ話し相手も増え、それが刺激になり認知症の進行も抑えられます」(帆角氏)

また、仕事の関係で遠方に住んでいるなど、諸事情から親の面倒を見られないという人もいるだろう。
その場合、介護保険の対象外だが、格安で使える(16)サービス付き高齢者向け住宅を利用するのも悪くない。
「特別養護老人ホームや介護老人保健施設は格安でサービスもいいですが、人気が高く10年待ちなんてところもあります。とはいえ、有料老人ホームはいまだに入居一時金を何百万円と取るところが多く割高です。その点、入居者が高齢者専門、バリアフリーで、昼間は医師ないし看護師、少なくとも介護専門家が常駐しながら、普通のマンション並みの賃料で住める、サービス付き高齢者向け住宅は確かに魅力です」(同)

また、住み慣れた家を離れたくないという親の場合は、24時間対応の定期巡回型訪問介護や、夜間でもヘルパーが急行してくれるサービスを利用するのも良い。これらはすべて、介護保険の対象となる。

だが、認知症になった際に生じるのは介護費用だけではない。治療費や入院費も負担となってくる。その際に活用したいのが(17)高額療養費制度だ。
「認知症が進み、寝たきりで長期入院となった場合、一般所得者なら、どんなにかかっても月に約8万円以上は払う必要がありません」(前出の光嶋氏)

また、(18)精神障害者保健福祉手帳も申請したい。認知症もその対象で、バス代や電車賃が半額になったり、等級にもよるが介護者は路上駐車ができるほか、各種税制優遇も受けられる。
それから、親が入っている(19)生命保険の説明をよく見てみることも重要だ。契約内容によっては、死亡保険金と同額の高度障害保険金が設定され、認知症がそれに該当する場合もあるからだ。

最後は万一のときに備えて、(20)任意後見制度を活用し、財産の目減りを防止しておこう。
「将来、認知症で判断力が衰えた時に備え、誰が自分に代わって財産管理をするか、本人が元気なうちに決めておく制度です。本人と後見人を引き受ける者が、一緒に公証役場に行けば、その取り決めを公認する、公正証書を作成してくれます。後見人を務めるのは息子など、家族が一般的です」(光嶋氏)

まさに、備えあれば憂いなし。これらを参考に、親の認知症にも慌てず、正しく対処していただきたい。

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