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47都道府県「おらが町の自衛隊」こんなに凄い!完全ガイド

[週刊大衆05月11日・18日号]

全国津々浦々に展開する陸海空自衛隊。地域に根差し、有事の際に国民を守るのが、その使命。あなたの地元部隊は!?

総兵力約24万人――。日本の領土、領海、領空を守る陸海空自衛隊は、全国にくまなく配置されている。
「自衛隊の優れている点は、"金太郎アメ"のように、日本のどの地域でも、有事に即応できる備えをしているところです。そのために、均一化された戦闘力を配置しているんです」(軍事ジャーナリストの井上和彦氏)

ただ、「北海道の大平原での戦闘と沖縄の島嶼部(とうしょぶ)での戦闘は同じようにはいかないため、地域ごとに特徴がある」(井上氏)のも事実。
そこで本誌は、「おらが町の自衛隊」と題して、47都道府県別の陸海空自衛隊の展開状況を詳述、そのエリア別戦力を分析してみた。

では本題に入る前に、「自衛隊基礎講座」として、その組織構成、大まかな分布を解説してみたい。まずは陸上自衛隊から。
陸自は隊員数が最も多く、約15万人おり、日本列島を北から北部方面隊(北海道)、東北方面隊(東北地方)、東部方面隊(関東甲信越と静岡)、中部方面隊(中部、東海、近畿、北陸、山陰、中国、四国)、西部方面隊(九州・沖縄)と5つのエリアに分けて、各々、総監部という名の指令部を設置している。
「各方面隊が、独立した"1個の陸軍"であると考えてください。各々、主力となる歩兵に該当する"普通科"、砲兵に当たる"特科"や敵機に対する対空攻撃もこなす"高射特科"、さらには、陸の花形である戦車や装甲戦闘車を運用する"機甲科"などが置かれています」(軍事ライターの黒鉦(くろがね)英夫氏)
陸自の施設は駐屯地と呼ばれ、"支社"にあたる分屯地も多数ある。

続いて海上自衛隊。海自は市ヶ谷の海上幕僚監部が中枢組織で、全国に北から大湊(おおみなと)(青森)、横須賀(神奈川)、舞鶴(京都)、呉(広島)、佐世保(長崎)の5つの拠点が存在する。
「戦闘の中心を担うのは4つの護衛隊群であり、これが海自のご本尊です。護衛艦は平たく言えば、戦闘に特化した"軍艦"ですよ。まどろっこしい名前ですが、要は"現代の連合艦隊"です」(黒鉦氏)

各護衛隊群はイージス護衛艦、各種護衛艦、潜水艦、哨戒ヘリから成り、これらを支援する各種航空機や支援艦艇がある。司令部は横須賀、舞鶴、呉、佐世保となっている。

最後に航空自衛隊。空自は全国を北から、北部、中部、西部の3つの航空方面隊と、南西航空混成団から成る4つの空域に分けており、各エリアごとに戦闘機部隊や、地対空ミサイル部隊(PAC=ペトリオット)を配置している。
「空自の最重要任務は領空侵犯対処ですが、昨年度の空自戦闘機のスクランブルは943回でした。これは、過去最高を記録した1984年とほぼ同数ですが、その約半数は中国軍機に対処したものです」(空自関係者)

エリア別に見ても、基地戦闘機部隊のスクランブル回数が最も多かったのは、尖閣諸島を含む空域を管轄する南西航空混成団。那覇基地からは、ひっきりなしにスクランブルのため急発進するF-15J戦闘機の姿が目撃されている。

「もうひとつ、空自の重要な任務にレーダーサイトの管理があります。レーダーサイトは日本全国に28か所設置されており、見晴らしのよい高台や、山頂に設置されています。このレーダーサイトを管理するのが、空自分屯基地の警戒隊の隊員です。現代の航空戦はレーダーで、いかに早く敵機を捕捉するかが勝敗を決めます。湾岸、イラク戦争で、開戦直後に多国籍軍がイラク軍のレーダー施設にミサイルを撃ち込み破壊したのは、そのためです」(前出の黒鉦氏)

一見地味に見えるが、これぞ、まさに"縁の下の力持ち"かもしれない。
それでは以下、北から順に「おらが町の自衛隊」を眺めていこう。
「特殊作戦」の最強は千葉県!!

「北海道は、他の地域を寄せつけない"オンリーワンの強さ"を誇っています」
と断言するのは、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏だ。

「北海道は冷戦期に最大の仮想敵であるソ連軍の上陸侵攻を防ぐために、極めて手厚い陸上戦力が投入されているんです。陸自が保有する戦車の大半と、戦車に随行して戦う89式装甲戦闘車、強力な火力で敵陣地を砲撃する99式155ミリ自走榴弾(りゅうだん)砲などはすべて、北海道のみで運用されています」(菊池氏)

北海道には、3個師団に加え、1個旅団が設置されている。
「大規模な演習場もあるため、戦車部隊以下あらゆる部隊が精強無比です。人員や装備など、陸自戦力の4分の1が北海道に集中しており、北海道のみで、小国の軍隊に引けを取らないほどの戦力がありますよ」(前出の井上氏)

ちなみに、北海道には、千歳にF-15J戦闘機の部隊もあり、空軍戦力も充実している。
「『さっぽろ雪まつり』など地元住民との交流も盛んです。雪まつりでは自衛隊が巨大な雪像を作るのが恒例。隊員も、雪まつりの担当を命じられることを名誉に思っています」(前出の菊池氏)

東北北部も高い戦力を誇っている。
「青森には海自の拠点である大湊があり、空自の三沢基地のF-2戦闘機は、対艦攻撃もこなす万能機。陸は、雪深い八甲田山系で過酷な冬季訓練を行う第5普通科連隊がいます。青森に"死角"は見当たらないですね」(菊池氏)

岩手駐屯地には、74式戦車の第9戦車大隊と空自のレーダーサイト、秋田には第21普通科連隊と、空自のレーダーサイトがある。青森、秋田、岩手の3県を合わせた戦力は凄まじい。東北南部3県は、これより戦力的には劣る。
「中心となるのは宮城ですね。仙台には東北方面隊の総監部が置かれ、多賀城(たがじょう)駐屯地には第22普通科連隊、大和(たいわ)駐屯地には74式戦車の部隊があります。また、芭蕉の句でお馴染みの空自松島基地には、曲技飛行でお馴染みのブルーインパルスの部隊がありますからね。F-2戦闘機の教育部隊もあるため、有事の際は空戦も可能です」(黒鉦氏)

続いて日本海側エリア、新潟と北陸に目を移そう。
「新潟港は、有事の際に米海軍の巨大空母も係留可能な要衝です」(黒鉦氏)

富山、福井両県は残念ながら目立った戦力はなし。
「北陸で気を吐くのは、石川。金沢駐屯地には第14普通科連隊が、空自の小松基地にはF-15J戦闘機の部隊が、日本海上空ににらみを利かせています」(黒鉦氏)

続いて関東。
「茨城の百里基地には、F-15Jと現在では希少な古参戦闘機F-4EJ改があり、首都上空の守りに就いています。要注目は千葉県。もしかすると、ここは非対称戦(正規戦闘ではない対テロ・ゲリラ戦闘)なら日本一かもしれません」
と言うのは前出の菊池氏。

「習志野駐屯地には、"泣く子も黙る"第1空挺団と、日本最強と言われる特殊部隊"特殊作戦群"がいますからね。彼らを前線まで迅速に空輸するヘリ部隊も、県内の木更津にスタンバイしています」

お隣り埼玉の大宮駐屯地には、地下鉄サリン事件でも活躍した中央特殊武器防護隊がいる。NBC(核・生物・化学)兵器に対処するエキスパートだ。
「神奈川には海自の中枢とも言える横須賀があります。イージス艦に加え、豪州軍も欲しがっている世界最強の『そうりゅう』型潜水艦、先日就役したばかりの"日の丸空母"『いずも』型護衛艦も横須賀の所属です」(黒鉦氏)

首都・東京には防衛省や、陸海空の幕僚監部が入るが、意外や駐屯地も8つあり、第1普通科連隊が23区の守りに就いている。
「群馬には輸送ヘリ部隊があり、昨年9月の御嶽山噴火の際、出動しています。御嶽山頂で火山ガスと灰にまみれながら、被災者の捜索に当たったのが、長野の松本駐屯地を拠点とする第13普通科連隊です。彼らは、日本アルプスでもゲリラ戦闘ができるように訓練された"山岳レンジャー"の精鋭です」(菊池氏)

中部地方では、静岡の存在が目立つ。
「静岡の富士学校は、陸自のあらゆる装備を取りそろえ、戦技を研究、指導しています。教官となる自衛官は経験豊富な猛者ぞろいですから、実戦を行ってもかなり強いはずです」(軍事ライターの古是三春氏)

近畿地方では、京都が突出していると言える。
「軍港舞鶴には、イージス艦と各種護衛艦に加え、強力な90式艦対艦誘導弾を搭載した『はやぶさ』型ミサイル艇も備える。さらには、4月から"ヘリ空母"と言われる護衛艦『ひゅうが』が合流、戦力がアップしましたね」(菊池氏)
最注目部隊が駐屯する長崎県

都構想に向けて走り出した"西の都"大阪は、第38普通科連隊らが守護神。山陰・中国地方では、広島と山口が精強だ。
「呉には、横須賀と並び海自の潜水艦があります。それと余談ですが、艦で作られる料理は呉がダントツで美味しい。その理由は隠し味に"オタフクソース"を使っているからなんです(笑)」(菊池氏)

自衛隊の最高指揮官である安倍晋三首相の地元・山口も、なかなかの戦力。
「第17普通科連隊が陸を守り、米海兵隊と共同使用する海自の岩国航空基地は、P-3C哨戒機等が控えています。P-3Cは別名"サブマリンハンター"。短魚雷に対潜爆雷、強力な対艦ミサイルも発射可能です。P-3Cで遠方から対艦ミサイルの集中攻撃を行えば、中国海軍の虎の子空母『遼寧』だって撃沈できますよ」(黒鉦氏)

続いて四国だが、この地域は日本列島の"下腹"と言える部分のため、敵の侵入は想定しにくい。したがって、陸海空とも自衛隊の配備は手薄になっている。
「徳島は地元の要請により、自衛隊駐屯地を誘致しており、12年に徳島駐屯地ができたばかり。自治体が自衛隊を誘致するのは、激甚災害が発生した際に地元住民を守るという意味合いがあるんです」(黒鉦氏)

自衛隊は他国の侵略に備えるだけではないのだ。
四国とは打って変わり、九州・沖縄は今、もっとも手厚い戦力が投入されている地域。むろん、南西方面から魔の手を伸ばしている中国に備えるためだ。
「福岡の築城(ついき)にはF-15JとF-2の戦闘機部隊があるため、対戦闘機、対艦戦闘の両方が可能です。弾道ミサイルを撃墜可能なPAC(パック)3も展開していますから、鬼に金棒でしょう。佐賀には島嶼防衛でも有効な戦力となる"世界最強戦闘ヘリ"AH-64Dアパッチがあります」(黒鉦氏)

強豪県がひしめく九州地区で、最も注目を集めているのが、長崎の相浦(あいのうら)駐屯地の西部方面普通科連隊、通称・西普連(せいふれん)だ。
「彼らは"日本版海兵隊"。中国に南西部島嶼を奪われた際に奪還作戦ができる唯一の部隊なんです」(菊池氏)

前出の古是氏も、
「米海兵隊と合同で水陸両用作戦の訓練を行っています。小銃を担いで遠泳による上陸作戦も可能な最精鋭たちで、トライアスロンの選手以上ですよ」
と太鼓判を押す。長崎には巨大軍港・佐世保もあり、海戦能力も極めて高い。宮崎には新田原基地に空自戦闘機部隊の教導隊がある。
「エース級の腕前のパイロットが集い、戦闘機戦闘の技術を研究しています。実戦投入されたら、一番強いんじゃないでしょうか」(菊池氏)

大分、熊本、鹿児島も軒並み充実した戦力を誇っているが、特に注目したいのは、その"士魂"だという。
「この地域の隊員と飲むと、すぐ西郷どんの話を熱く語ります。薩摩隼人に肥後もっこすの伝統は健在ですよ」(菊池氏)

北海道から九州までを眺めてきたが、最後は日本の南端・沖縄。前出の井上氏は、こう断言する。
「島嶼防衛は陸海空を問わず、現在、全自衛隊の最優先課題です」

その沖縄、陸自は第15普通科連隊、空自は対空ミサイルPAC3に、F-15J戦闘機部隊もそろえる。
「来年の3月に、日本最西端の与那国島に陸自の駐屯地が作られます。地元から熱心な誘致があり、昨年9月には、そのために住民投票もやりました。与那国は中国に最も近い日本の領土です。こうした離島をどう守るか……これが我々に課せられた喫緊の課題です」(陸自幹部)

今、この瞬間も、あなたの町の自衛隊は"その時"に備えている――。

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