全国津々浦々に展開する陸海空自衛隊。地域に根差し、有事の際に国民を守るのが、その使命。あなたの地元部隊は!?

総兵力約24万人――。日本の領土、領海、領空を守る陸海空自衛隊は、全国にくまなく配置されている。
「自衛隊の優れている点は、"金太郎アメ"のように、日本のどの地域でも、有事に即応できる備えをしているところです。そのために、均一化された戦闘力を配置しているんです」(軍事ジャーナリストの井上和彦氏)

ただ、「北海道の大平原での戦闘と沖縄の島嶼部(とうしょぶ)での戦闘は同じようにはいかないため、地域ごとに特徴がある」(井上氏)のも事実。
そこで本誌は、「おらが町の自衛隊」と題して、47都道府県別の陸海空自衛隊の展開状況を詳述、そのエリア別戦力を分析してみた。

では本題に入る前に、「自衛隊基礎講座」として、その組織構成、大まかな分布を解説してみたい。まずは陸上自衛隊から。
陸自は隊員数が最も多く、約15万人おり、日本列島を北から北部方面隊(北海道)、東北方面隊(東北地方)、東部方面隊(関東甲信越と静岡)、中部方面隊(中部、東海、近畿、北陸、山陰、中国、四国)、西部方面隊(九州・沖縄)と5つのエリアに分けて、各々、総監部という名の指令部を設置している。
「各方面隊が、独立した"1個の陸軍"であると考えてください。各々、主力となる歩兵に該当する"普通科"、砲兵に当たる"特科"や敵機に対する対空攻撃もこなす"高射特科"、さらには、陸の花形である戦車や装甲戦闘車を運用する"機甲科"などが置かれています」(軍事ライターの黒鉦(くろがね)英夫氏)
陸自の施設は駐屯地と呼ばれ、"支社"にあたる分屯地も多数ある。

続いて海上自衛隊。海自は市ヶ谷の海上幕僚監部が中枢組織で、全国に北から大湊(おおみなと)(青森)、横須賀(神奈川)、舞鶴(京都)、呉(広島)、佐世保(長崎)の5つの拠点が存在する。
「戦闘の中心を担うのは4つの護衛隊群であり、これが海自のご本尊です。護衛艦は平たく言えば、戦闘に特化した"軍艦"ですよ。まどろっこしい名前ですが、要は"現代の連合艦隊"です」(黒鉦氏)

各護衛隊群はイージス護衛艦、各種護衛艦、潜水艦、哨戒ヘリから成り、これらを支援する各種航空機や支援艦艇がある。司令部は横須賀、舞鶴、呉、佐世保となっている。

最後に航空自衛隊。空自は全国を北から、北部、中部、西部の3つの航空方面隊と、南西航空混成団から成る4つの空域に分けており、各エリアごとに戦闘機部隊や、地対空ミサイル部隊(PAC=ペトリオット)を配置している。
「空自の最重要任務は領空侵犯対処ですが、昨年度の空自戦闘機のスクランブルは943回でした。これは、過去最高を記録した1984年とほぼ同数ですが、その約半数は中国軍機に対処したものです」(空自関係者)

エリア別に見ても、基地戦闘機部隊のスクランブル回数が最も多かったのは、尖閣諸島を含む空域を管轄する南西航空混成団。那覇基地からは、ひっきりなしにスクランブルのため急発進するF-15J戦闘機の姿が目撃されている。

「もうひとつ、空自の重要な任務にレーダーサイトの管理があります。レーダーサイトは日本全国に28か所設置されており、見晴らしのよい高台や、山頂に設置されています。このレーダーサイトを管理するのが、空自分屯基地の警戒隊の隊員です。現代の航空戦はレーダーで、いかに早く敵機を捕捉するかが勝敗を決めます。湾岸、イラク戦争で、開戦直後に多国籍軍がイラク軍のレーダー施設にミサイルを撃ち込み破壊したのは、そのためです」(前出の黒鉦氏)

一見地味に見えるが、これぞ、まさに"縁の下の力持ち"かもしれない。
それでは以下、北から順に「おらが町の自衛隊」を眺めていこう。

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