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8・12安倍談話 庶民が知らない 「裏交渉」スッパ抜き!

[週刊大衆08月10日号]

8・12安倍談話 庶民が知らない 「裏交渉」スッパ抜き!

戦後70年目となる今夏、首相が発表する談話に向け官邸周辺が慌ただしくなっている。政権の命運を握る"水面下"暗闘!!

一歩判断を誤れば奈落の底へと一直線――安倍晋三首相が、ギリギリの政権運営を強いられている。
「その最大の焦点が、16日に衆院本会議を通過した安保関連法案(以下=安保法案)であることは言うまでもありません。現在、法案は参院へ送られていますが、参院では衆院以上の激論が予想されます。展開次第では、激しい政局になる可能性が高い」(全国紙政治部デスク)

まさに"平成の安保騒動"といった様相だが、安倍政権は本誌既報のように、9月の連休前の参院可決の方針を変えていない。
「参院でも自公で過半数を押さえているため、その気になれば、すぐにでも法案を通過させることが可能です。首相の意を受けた高村正彦自民党副総裁は"支持率を犠牲にしてでも国民のために必要なことはやる"と明言。また、今や党内最大の実力者となった二階俊博総務会長も、"(議論して)何か月延ばしても同じだ"と、一気に突っ走る腹を固めていますからね」(同デスク)

とはいえ、強気の首相周辺をよそに内閣支持率は下落の一途。安保法案の衆院通過直後に実施された共同通信社の世論調査によると、支持率37.7%(前回調査から9.7ポイント下落)に対し不支持率は51.6%と上昇し、第2次安倍内閣発足以来、初めて支持を不支持が上回っている。
「高村副総裁は"支持率を犠牲にしても"と強がっていますが、"安保法案、総裁選、来夏の参院選"をにらむ安倍官邸と自民党幹部は、この結果に震えあがっています」(自民党担当記者)

"こうした事態"を招くことは安倍官邸も予想し、手を打っていたという。
「今国会の大幅会期延長(9月27日まで)は、党内の不満分子を抑え、総裁選で"無血再選"される道筋を作るためのものでもありました。安保国会中に総裁選が行われるため、"党が一丸となるべきときに対抗馬を立てるのは不謹慎"という理屈です」(政治評論家の浅川博忠氏)

しかし、官邸の想像以上に、民意の離反は深刻なものだった。
「安倍首相が突如として、建設費の暴騰が問題視されていた"新国立競技場の施工計画"を白紙撤回したのも、そのせいです。強烈なリーダーシップを見せつけたいということでしょう。また、20日には首相自らがフジテレビに出演し、安保法案への理解を呼び掛けています」(前出の記者)

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「新国立競技場建設は、森喜朗元首相の"案件"。安倍首相にとって森元首相は同派閥でもあり、師匠筋、頭が上がらない人ですからね。それでも、見直し指示をして建設に待ったをかけたのは、下がる一方の支持率に歯止めをかけたい首相の焦りにほかなりません」

"打てる手は打った"感のある官邸。あとは粛々と安保法案の参院通過を目指す……といきたいところだが、安倍首相には今夏、もうひとつの"正念場"が待ち受けている。

それが、政権発足当初から折に触れ口にしている「戦後70年談話」、いわゆる「安倍談話」である。
首相談話といえば、村山富市首相(当時)が戦後50年(1995年)の節目に発表した「村山談話」と、小泉純一郎首相(当時)の戦後60年(2005年)の際の「小泉談話」がある。
「もうひとつ、宮沢内閣で河野洋平官房長官が発表した"河野談話(93年8月4日)"が有名だが、これは91年に韓国の元慰安婦らが日本政府に賠償訴訟を起こしたことに対する"日本側の回答"という意味合いが強い。最近の調査で、韓国側の"言い値"で談話を作成していたことが判明しているし、閣議決定を経ていないため、村山、小泉両談話と同列に論じることはできない」(自民党中堅議員)

それでも、河野元官房長官は村山元首相と6月9日に共同会見を開き、両談話を踏襲するよう、安倍首相にクギを刺している。果たして安倍首相は、過去の談話を踏襲するのか?
「昨年3月の衆院予算委員会で"安倍内閣で両談話を見直すことはない"と明言しています。これは"踏襲する"という意味でしょう。ただ、両談話と同じように"植民地支配、侵略、心からのお詫び"といった、いわゆる"謝罪3点セット"を盛り込むことは100%ありません。安倍首相は"同じ文言を入れるのであれば談話を出す必要はない"と関係者に打ち明けていますからね」(官邸詰め記者)

安倍談話は、「首相が伊勢神宮で行った年頭会見(1月5日)が下地になる」(同)という。首相は伊勢神宮の会見でこう述べた。
〈(戦後70年の歩みに関して)自由で民主的な国家を作り上げ、アジアや世界の友人たちの平和と発展のために、できる限りの貢献をしてきた〉
〈積極的平和主義の旗の下、世界の平和と安定のため一層貢献していく〉
談話は、この伊勢での会見をエッセンスに、平和国家・日本を世界中にアピールする内容になるという。
また、4月にインドネシアでスピーチした〈日本は先の大戦の"深い反省"とともに〉のフレーズも、盛り込まれる予定だ。

まとめると、「過去の談話は踏襲する」が、「"謝罪3点セット"は割愛」。「戦争の総括は"深い反省"」と表現し、「未来に向けた日本の国際貢献」に力点を置いた内容――ということになる。
中国首相と会談した安倍密使

次に、談話が発表されるタイミングだが、村山、小泉談話が終戦記念日の8月15日に発表されていることから、この日が本命視されてきたが、「15日は絶対にありません」(前出の官邸詰め記者)という。
「終戦記念日には天皇陛下のお言葉があるため、遠慮することになったんです。発表のタイミングは、お盆前の12日近辺が最有力視されています」(同記者)

その輪郭が明らかになりつつある安倍談話。ただ、前述したように政権は安保法案をめぐり針のむしろ。談話に"謝罪3点セット"も盛り込まれないとなると、中韓両国の猛反発を招くことは必至だろう。
「実は、その点は心配なしです。安倍官邸はぬかりなく、すでに中国に"密使"を派遣していますからね」(全国紙外信部記者)

密使とは谷内(やち)正太郎国家安全保障局長、その人だ。
「谷内局長は16日に訪中し、"序列第2位の大物"李克強首相らと会談しています。ここで安倍談話の内容を示し、中国側の反発を最小限に抑える言質を取ったはずです。会談後、李首相は"今回の訪問は、両国関係を正常な軌道に戻すことにとって積極的な意味がある"と発言。これは交渉が成功した証拠です」(同記者)

中国側は談話を飲む見返りとして、9月3日の「抗日戦勝利70周年式典」に首相を列席させるように要求したという。
「"敗戦国"の首相が出席すれば、習近平国家主席の威厳を国内外に示すことができる。また、中国は上海株の下落騒動で見られたように経済が不調ですから、さらなる日本の対中投資も要請したはずです」(同)
もうひとつの"反日大国"韓国については、「"親分"中国にならうため、放っておいてもよしと判断した」(同)という。

"最大の障壁"になると思われた中韓と事前に"手打ち"が成立した今、談話発表に憂いなし……と思いきや、安倍首相には意外な"強敵"がいるという。
これまで安倍首相の"後見人"として憲法改正路線を支持してきた読売新聞グループ本社会長(兼主筆)の渡邉恒雄氏だ。御年89歳になる"ナベツネ氏"が、安倍談話に「ノー」を突きつけているというのだ。

"安倍VSナベツネ"バトルの火蓋が切られたのは4月22日。首相の70年談話に、渡邉氏は同日付の読売新聞社説で、
〈"侵略"に言及しないことは、その事実を消したがっているとの誤解を招かないか(中略)70年談話はもはや、首相ひとりのものではない。日本全体の立場を代表するものとして、国内外で受け止められている〉
と、「侵略、植民地支配、反省」の文言を省こうとする安倍談話に、真っ向から異議を唱えたのだ。
"蜜月時代"が終焉した理由

永田町関係者が明かす。
「ナベツネさんは、自社の社員を安倍談話の内容を検討する有識者会議である『21世紀構想懇談会』に送り込んでいます。さらに、懇談会の北岡伸一座長代理は、読売主催のシンポジウム常連の"読売文化人"として知られています。その北岡氏は先の大戦について"安倍首相に『日本は侵略した』と言わせたいと思っている"と述べています。意外でしょうが、談話に"侵略"を盛り込むよう働きかけている"黒幕"はナベツネさんなんです」

渡邉氏が"過去の謝罪"にこだわるのは、自らの戦争体験(終戦時、陸軍二等兵)も影響しているという。
「ナベツネさんは、軍隊に入り、上官からいじめられたと言っています。昨年の『文藝春秋』9月号に発表した『我が体験的靖国論』からも戦争アレルギーがよく分かる。彼は安倍首相が謝罪を見送った場合、倒閣運動も辞さないと菅義偉官房長官に伝えていると言いますから、本気も本気なんですよ」(前出の関係者)

実は安倍首相と渡邉会長は、思想信条において相反する面が多々あるという。軋轢が表面化した最初は、第2次安倍政権発足(12年12月)の1年後だった。首相の靖国参拝に「断固反対」を公言する渡邉氏を嘲笑うかのように、13年12月26日、安倍首相は突然、靖国神社を参拝した。
「A級戦犯が合祀されている靖国参拝に代わり、国立戦没者追悼施設を建設すべきというのがナベツネさんの持論。第1次安倍政権の発足時には、安倍さんに"靖国神社に参拝するな"とネジ込んだと言いますからね」(自民党関係者)

この言いつけを守ったのか、実際、第1次安倍内閣では、安倍首相は一度も靖国神社を参拝していない。
「ナベツネさんは、第2次安倍内閣では、その約束を反故にされたとおカンムリなんですよ。安倍首相のお父さん、晋太郎元外相は、政治家になる前は毎日新聞の政治部記者でした。当時、ナベツネさんは読売新聞政治部の辣腕記者として勇名を馳せていた。ナベツネさんは晋太郎さんが将来必ず政治家になるとにらみ、当時から安倍家に出入りしていたんです。そんな関係もあり、晋太郎氏が亡くなった後、ナベツネさんは安倍首相の後見人役を自認していたんです」(古参の政治記者)

安倍首相の靖国参拝以降、その"蜜月関係"に隙間風が吹き始めたわけだ。
「両者の関係がいよいよ抜き差しならなくなったのは、安倍談話の内容が漏れ伝わってきてからです。ただ、海千山千のナベツネさんのこと、安倍談話にここまで影響力を発揮しようとするのは、"隠された思惑"があるためとも言われています」(同記者)

それは、17年4月からの消費税増税(10%)時に、「新聞に軽減税率を適用させる」というものだ。
「新聞は生活必需品、低所得者も読めるようにとの理屈です。インターネット普及で新聞離れが叫ばれる今、それを食い止めたいナベツネさんが談話をめぐりブラフをかけて、政権との交渉材料にするというものです」(前出のデスク)

これは少しうがった見方かもしれないが、
「首相は戦後70年談話をうまく軟着陸させられなければ、死に体になる。安保法案可決、総裁再選、そして来夏の参院選勝利、悲願の憲法改正へのシナリオが危うくなるわけです。無事に夏を乗り切ってほしいというのが、偽らざる願いです」(前出の自民党関係者)

安倍首相の暑くて長い夏は、これからだ――。

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