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安倍政権「衆議院1月解散で自民党大圧勝」のシナリオ

[週刊大衆2016年10月31日号]

安倍政権「衆議院1月解散で自民党大圧勝」のシナリオ

 総裁任期延長に憲法改正。ライバル不在の今こそ好機とばかりに勝負をかける与党。その先に待つのは……。

 永田町が揺れている。「自民党が来年1月の党大会開催を3月に延期するや、民進党の野田佳彦幹事長も、規約で1月に招集することになっている定期党大会をずらし、3月に開くと地方の幹部らに伝えました。与野党ともに、すでに臨戦態勢ということです」(全国紙政治部ベテラン記者)

 来年年明け早々に国会を解散し、2月に総選挙を行う“1月解散”気運が沸騰。これから師走にかけて、永田町は、まさに“センセイ”たちが東へ西へ“走る”時期に突入するのだ。巷間、降って湧いた解散説の理由はというと、「安倍晋三首相は、12月に来日するロシアのプーチン大統領から北方領土返還の言質を取り、それを弾みに、直後の衆院選で大勝利を目指すのでしょう」(前同)

 しかし、事はそう単純ではない。自民党の中堅議員が、こう語る。「衆参合わせ、改憲発議に必要な3分の2の議席を確保しているにもかかわらず、わざわざリスクを冒す必要はありませんよ。かたや、ロシアは北方4島の日本帰属を交渉の条件にしておらず、歯舞と色丹を“日本にプレゼントする”というスタンス。2島が返還されても、当然、“弱腰外交”の批判は残ります。それで解散して本当に大丈夫なのか」

 このように、自民党内には少なからず1月解散を危惧する声があるものの、「選挙の風が吹いているか吹いてないかといわれたら、もう吹き始めている。これだけ風が吹いて、(選挙の)準備に取りかからない人がいたら論外だ」と、自民党の二階俊博幹事長自らが、派閥所属議員の会合でハッパをかけたことからも、解散は既定路線であることが分かる。さらに菅義偉官房長官も、「(解散は)首相がやるといえばやる。首相自身が一番タイミングのいいときに考えられる」と発言するのだ

「来年5月以降、衆院選小選挙区の定数は“0増6減”となり、それに伴う区割り変更があります。最高裁は“一票の格差”の観点から現行の区割りは違憲状態と判断しましたが、それを無視してでも、安倍自民としては区割り変更前のタイミングで選挙をしたいということです」(前出の記者)

官邸筋は、「そこには、練りに練った安倍首相の計算が見え隠れしている」と言うが、はたして、どんな秘策を用意しているのか。政治評論家の有馬晴海氏は、こう語る。「政権与党にとって、選挙(衆院選)は勝てるときに実施するのが原則。まずは、安倍政権の生命線であるアベノミクスが完全に失速する前に、選挙を実施しておく必要があるんですよ」

 実は、麻生太郎首相(現・財務相)時代に、自公政権は手痛い失敗を犯しており、特に公明党には、その危機感が強い。「当時、公明党は麻生氏に再三、早期解散を求めていたんです。結局、1年後に“追い込まれ解散”となり、北側一雄幹事長(当時)ら8選挙区の前職全員が落選。いまだに党内では、その悪夢がトラウマになっているんです」(公明党関係者) 1月解散の発信源が公明党だといわれるのは、このためだ。

「創価学会票が母体の公明党として気になるのが、来夏の東京都議選。しかし、1月解散・2月総選挙なら都議選までに半年の余裕があります。逆に都議選後で半年の余裕を見た場合、解散は来年の年末以降となり、衆院議員の任期が1年を切って、“追い込まれ解散”の悪夢が蘇ることになります。安倍首相には、創価学会票をフルに動員できるうちにという思惑もあるんでしょう」(前出の記者)

 おまけに、安倍自民の最大のライバルとなる民進党が分裂含みの体たらく。10月23日投開票の衆院補選(東京10区・福岡6区)で野党統一候補を擁立する民進党は、次期の総選挙でも野党候補一本化へ動き出しているが。「民進党は蓮舫新代表の二重国籍問題で支持率が伸びず、一方では野田佳彦幹事長起用という人事問題で党内の反発が高まっています」(前出の有馬氏)

 そもそも、野田氏は首相時代、総選挙で大敗し、安倍自民に政権を奪われた張本人。「蓮舫氏を支持したグループも、野田氏の起用に猛反発し、離党の動きさえ見せています」(前出の記者) かといって、蓮舫代表自身に、この窮地を切り抜ける力はなさそうだ。

「新代表が誕生した当夜、蓮舫氏がNHKの『ニュースウオッチ9』に登場するや、視聴率は5%も下落。やはり、二重国籍問題が影響したんでしょう。マスメディアを利用してきた蓮舫氏の“終わり”を告げる出来事として、業界では注目されています」(テレビ業界関係者)

 もはや、安倍自民にとってライバル不在の状況。解散するなら「今でしょ!」という絶好のタイミングが来年1月なのだ。早くも永田町では、12月の日露首脳会談の結果によらずとも、2月の総選挙では「自民圧勝」との観測が流れ、票読みが始まっているという。選挙情勢に詳しい政治評論家の浅川博忠氏が、こう分析する。「自民の獲得議席は現有議席を仮に下回ったとしても、せいぜい10議席。公明党・日本維新の会と合わせ、現有勢力は維持できると見ています」

 つまり与党は、東京五輪後までの4年間、改憲議席数を維持したまま、安定して政権の座に居続けることができるのだ。そうなると、長期安定政権をもたらした安倍首相の党内での求心力と発言力はますます強固なものとなる。「実は、それこそが安倍首相の本当の狙いなんです」(前出の官邸筋)

 安倍首相の総裁任期は2018年9月まで。党内には連続3選を禁止する規定があるからだ。しかし、二階幹事長が旗振り役となり、「総裁任期3期9年」へ向けた動きが加速。3月の党大会で正式決定する方針だという。「直前の総選挙で大勝した安倍首相の総裁任期延長に、誰も反対できないはず。つまり、1月解散は、総裁任期延長を実現する布石にもなると読んでいるんです」(有馬氏)

 安倍首相の狙いは、それだけではない。「今のところ、“ポスト安倍”の最有力は石破茂氏(前地方再生担当大臣)ですが、総選挙で大勝に導いた総裁を前に、石破氏がはたして出馬できるかどうか。総選挙の勝利によって安倍首相は“ポスト安倍”の動きを封じ、無風で総裁3選を実現しようとしているんです」(前同)

 さらに、小池百合子東京都知事が目論む新党結成を牽制する狙いもあるという。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう分析する。「来年夏の都議選挙を前に、小池新党旗揚げの可能性があります。小池氏はその後、国政選挙で中央へ議員を送り込むという流れを考えているはずです」 その前に総選挙を実施すれば、国民的人気を博す小池氏の動きを封じ込めることにもつながる。

「かくして、創価学会票のほか、現執行部に反発する民進党支持勢力の票を取り込みつつ、焼け太るのは安倍自民だけというシナリオです」(官邸筋) 選挙後は、第4次安倍内閣が発足することになるが、早くも、仰天すべき人事情報が流れている。金銭授受疑惑で告発されていた甘利明・元経済再生担当大臣が入閣するというのだ。

「甘利氏は安倍首相の盟友であると同時に、政権のビッグ4の一人。今夏の参院選後の所信表明演説で安倍首相は経済を強調しました。その演説を聞いた永田町関係者の間で、経済閣僚だった甘利氏が何らかの形で復帰するのではないかと噂されたのは事実です。金銭授受疑惑も不起訴に終わり、甘利氏が2月の総選挙で当選すれば、“みそぎ”をすませたことになります。重要ポストで復帰する可能性も十分にあります」(前出の鈴木氏)

 こうして“怖いものナシ”となった安倍自民が、2月の総選挙後に本格化させるのが、憲法改正だ。「改憲は安倍首相にとって政治生命を賭けた勝負。ただ、これには時間が必要です。まず、憲法審査会で議論を尽くし、草案を起草。衆参両院で3分の2の賛成を得ても、国民投票を実施しなければなりません。最低でも2~3年はかかる大仕事です。さらに、天皇陛下の生前退位問題を優先させ、国会で議論する必要があります。となると、どうしても時間が必要になってきます」(前同)

 総選挙の圧勝と総裁3選で長期安定政権が実現すれば、改憲を遂行するために必要な時間を十分に確保できる。だが、恐ろしいことに、政権の長期化は、国民生活への負担増となって跳ね返る危険性もある。「これまで安倍政権は選挙のたびに国民にアメをちらつかせてきました。消費増税の延期もしかり。今回の配偶者控除廃止の見送りもそうです。同控除を廃止したら、事実上の増税となるため、政府与党は廃止を先送りする方針です。しかし、2月の総選挙後、しばらく選挙はありませんから、もうアメは必要なくなります」(野党関係者)

 前出の浅川氏が、こう続ける。「自民圧勝となると、霞が関との関係も変わってきます。特に財務省は、これ以上、財政赤字を増やしたくないというのが本音。消費増税が実施されるまでの間、新たな課税手段を講じてくる可能性はあります」 このほか、労働時間などに例外を設け、“残業代ゼロ法案”と呼ばれるホワイトカラー・エグゼンプション制度についても、「導入が考えられます。そもそもは、専門職で一定の年収以上を対象にした制度ですが、一度成立してしまうと、職種が広げられ、年収の基準が下がることも予想されます」(前同)

 アメに代わってムチの連続。焼け太った安倍自民は、もはや、誰にも止められなくなる――。

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