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トランプ新大統領就任で「日本の暮らし」は、こう変わる!

[週刊大衆2016年12月12日号]

トランプ新大統領就任で「日本の暮らし」は、こう変わる!

 海の向こうの出来事と侮るなかれ。規格外のアノ男が剛腕を振るえば、東アジアの小国には多大な影響が!

 大方の予想を覆し、ドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利してから2週間。次期大統領の“爆弾発言”が、日本を震撼させている。

 「日本時間の22日、トランプ氏は来年1月20日の就任初日、“TPP離脱の意思を(参加国に)通知する”と方針を表明したんです。しかも、この表明は安倍晋三首相が訪問先のアルゼンチンで“TPPはアメリカ抜きでは意味がない”と語り、選挙中からTPP撤退を宣言していたトランプ氏に翻意を促すメッセージを送った1時間後のことでした」(全国紙政治部記者)

 そう、安倍首相の提案は、ものの見事に無視されてしまったというのだ。そもそも、このTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、どのような協定なのか? 「日本やアメリカを中心とした、12か国が加盟するアジア太平洋地域の自由貿易協定です。安倍首相は成長戦略の柱と位置づけており、アベノミクスの減速が指摘される中、財政出動、すなわち税金をかけずに日本経済を牽引できると、大きな期待を寄せていました」(全国紙官邸担当記者)

 だからこそ、衆院TPP特別委員会で強行採決し、今国会での承認と関連法案成立を目指してきたのだ。「オバマ大統領に促され、TPP参加を決めたのに、気づけば提唱国が逃亡。安倍首相が18日(日本時間)、ニューヨークのトランプ・タワーに次期大統領を訪ねた際、麻生太郎財務相いわく、“会談後にトランプ氏が首相をタワーの下まで見送りに出た”、菅義偉官房長官いわく、“世界の首脳で一番初めに対面形式の会談ができた”と強調した安倍・トランプ会談はなんだったんでしょう」(民進党中堅議員)

 安倍首相は“規格外の男”に振り回されたあげく、「外交上の失政」とまで野党に批判され、大恥をかいてしまったのだ。「公約通り、トランプ氏がTPP離脱を表明したことで、改めて、トランプ政権の日本への影響を検討し直さなくてはならなくなりました」(官邸筋)

 大統領選での公約は、あまり守られないのがアメリカの常識だったが、新大統領の宣言通り、剛腕を振るう可能性が出てきたのだ。本稿では、トランプ氏の発言や公約を基に、今後、日本が被る“被害や恩恵”について検証したい。まずは、冒頭で取り上げたアメリカのTPP離脱によって、我々は何を覚悟しなければならないのか?

「アメリカのTPP離脱の先にあるのは、自国の保護貿易です。そうなると、加工組立業の割合が32%と、先進諸国の中でも際立って高い日本は、大打撃を受けることになります」(経済評論家の杉村富生氏)

 日本が今も昔も貿易立国なことに変わりはない。そもそも、TPPは加盟国間の貿易にかかる関税を事実上撤廃するという協定だ。「関税が撤廃される分、日本の工業製品が買われやすくなり、輸出増で景気が浮上。庶民生活から言うと、それが給料などに跳ね返ってくるというシナリオが幻に終わったことを意味します」(地方の商工会幹部)

 それどころか、貿易が停滞すれば、これまで以上に景気が大失速しかねない。しかも不気味なのは、トランプ氏がTPPからの撤退を表明すると同時に、「雇用と産業をアメリカに取り戻す公平な2国間貿易協定の交渉を進めていく」と宣言していることだ。「そうなると、TPPに代わり、日米が自由貿易協定を結ぶ可能性も考えられます。2国間協定の場合、交渉がしやすくなるだけに、アメリカからの要求がより厳しくなることでしょうね」(前出の杉村氏)

 これまでも野党がTPPの承認を拒んできたのは、輸出産業が潤う反面、デメリットも多いからだ。「まず挙げられるのが、国内の農業が打撃を受ける。TPP交渉でも、“聖域”と呼ばれた主要5品目(コメ・牛肉・豚肉・麦・乳製品)でさえ、譲歩させられています」(農協関係者)

 2国間貿易協定締結によって、アメリカ産のコメや牛肉が、これまで以上に安くなる可能性はあるが、「かつて、狂牛病とアメリカ産の牛肉との関係が取り沙汰されました。また、遺伝子組み換え食品が大量に輸入され、規制ができなくなる事態も想定されます。日本の“食の安全”が脅かされる可能性も否定できません」(市民団体幹部)

 食卓だけではない。職業ドライバーにとって死活問題とも言えるガソリン価格にも変化がありそうだ。「アメリカとロシアの関係改善が、原油価格の上昇を招き、それがガソリン代に跳ね返ってきます」と分析するのは、あるシンクタンク関係者。

 確かに、トランプ氏とロシアのプーチン大統領は、選挙前から“蜜月関係”にあった。トランプ氏が「私ならウラジーミル・プーチンとうまくやれるだろう」と“友達宣言”すれば、一方のプーチン大統領も「非常に傑出した人物で、才能があることは疑いようがない」とベタ褒め。

 外交問題評論家の小関哲哉氏は、こう指摘する。「アメリカとロシアは、ともに産油国ですが、OPEC(石油輸出国機構)には加盟していません。両氏の“蜜月関係”を考えると、米ロが今後、原油の価格カルテルを結び、結果、原油価格が上昇するという選択肢はありえます。ロシアにとって原油安に伴う財政難を脱出できるチャンス。ヤル気は十分あるでしょう」

 ちなみに、1バレル当たりの原油価格が10ドル値上がりすると、ロシア経済は危機的状況を脱することができるという。さらに、「ガソリン価格が上がるだけではありません」と語るのは、法政大学元教授の五十嵐仁氏だ。

「合成ゴム、プラスティック類、一部食品、化粧品、液化石油ガスなどの石油関連製品が、一斉に値上がりすることもありえます。原油価格が高騰すると、一番割りを食うのが日本です」

 一方、トランプ氏が大統領候補になった瞬間から振り回され続けたのが、日本の安全保障問題だ。トランプ氏とその側近は選挙中、「日本は“北朝鮮や中国が脅威”だと言ってるくせに、ここ20年間、防衛費は国内総生産(GDP)の1%にとどまっている。あまりに虫がよすぎる」

 と、在日駐留米軍の撤退、もしくは駐留経費の全額負担を求める発言を繰り返してきた。当初、この発言に日本の防衛関係者は危機感を募らせていたという。「日本単独で中国の脅威から国を守るには、現在の4倍の防衛費(20兆円)が必要になるからです」(防衛省関係者)

 トランプ氏の当選後、安倍首相は電話協議し、日米同盟強化を確認したが、「同盟を強化する以上、駐留米軍の撤退はないと思いますが、駐留経費の負担増は考えられます。日本は年間ベースで、経費の75%にあたる約5800億円(2016年度)を負担。これは、米軍が同じく駐留するドイツや韓国より、はるかに多い金額です。ただ、尖閣諸島などを巡る中国との緊張関係を考えると、ある程度は払わざるをえないでしょう」(前出の政治部記者)

 また、一見、庶民とは縁遠そうな法人税の大幅減税も、実は大問題という。次期大統領は、法人税を現行の35%から15%へ減税すると宣言しているが、「これは、実行するでしょうね。その“副作用”として、国際的な法人税減税合戦が展開される恐れがあります」(前出の五十嵐氏)

 国内企業が安い法人税を求めて海外へ進出すれば、国内産業が空洞化する。企業を自国に引き留めるためには、アメリカ以外の国もまた、法人税率を引き下げざるをえないという。すでに、イギリスのメイ首相は、法人税率を主要20か国・地域(G20)の中で最も低い水準に引き下げる方針を示している。五十嵐氏がこう続ける。

「日本の場合、酒税の見直しや配偶者控除も実質的な増税方向で議論が進んでいます。そこに、法人税減税となれば、その財源を庶民が負担することになります。消費税増税が延期される中、さまざまな角度から税負担を強いられることは十分に考えられます」

 このように、庶民の負担は増えるばかり。その一方で、法人税減税で恩恵を受けるのは一部の大企業だ。「減税によって浮いた分は一部給与のベースアップに回ってくるとしても、それはわずか。企業の内部留保が増えるだけです。現に財務省が発表した資本金10億円以上の企業の内部留保は、昨年は313兆円です。5年前と比べて40兆円も増えています。これでは景気が循環し、消費が拡大するという絵図は描けません」(前同)

 16日に開かれた「働き方改革実現会議」の席上、安倍首相は「アベノミクスの好循環を継続させるカギは、来年の賃上げです」と言って、経済界にベースアップの実施を求めたが、ご存じの通り、賃上げは一部企業の正社員に限られる。

「とはいえ、彼らの賃上げも多くの会社は“雀の涙”程度。しかも、賃上げ分は内部留保を切り崩すことよりも、下請けを泣かせるか、非正規雇用への切り替え、サービス残業の増加などで総人件費をカットして生み出すことになるでしょう」(経済アナリスト)

 また、トランプ氏の勝利後、日米の株価が急騰し、“トランプバブル”ともてはやされているが、「それはトランプ氏が来年1月、正式に大統領へ就任するまでの一時的な現象」(前出の杉村氏)だと言う。

 トランプ氏が1兆ドルの公共投資などを公約していることから、為替市場はドル高(円安)へシフトし、日本の株式市場も値上がりしている。しかし、「アメリカもドル高を容認できるのは1ドル115円まで。その水準を超えると、円高・ドル安に転じ、日本の株式市場も下落することになるでしょう」(前同)

 株が上がろうが、下がろうが関係ないと言うなかれ。実は、株式投資とは無縁の人々にも、多大な影響があるという。五十嵐氏が指摘する。

「円高は、輸出企業にマイナスになります。しかし、それ以上に気になるのは、株価を下支えしている年金積立金。我々が支払っている積立金が含み損を抱えることになるんです。そうなると、年金の開始年齢の引き上げ、場合によっては年金額の減額も十分に考えられるんです」

 増税と年金額の減額というダブルショックが庶民を襲うというのだが、そこに、さらなる社会保障の負担増がのしかかってくる。「安倍内閣が発足した2012年の翌年には、社会保障プログラム法が成立しています。これは、医療・介護などの分野で国の支出を減らし、自治体や家庭に負担してもらうという法律。この影響によって70歳以上の医療費が跳ね上がっているんです。さらに、円高・株安が長引くと、生命保険も予定していた利率を稼げず、利率を見直す事態も想定されます」(前同)

 景気は悪化し、ガソリンや、その他の石油製品が値上がりする。年金はもらえず、増えるのは税金などの負担ばかり――。こう見ると、トランプ改革での恩恵は、アメリカ産の牛肉が安くなることくらいか……。

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