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ウソだらけ? ネットにはびこる「インチキ医療情報」の見分け方

[週刊大衆2017年01月02日号]

ウソだらけ? ネットにはびこる「インチキ医療情報」の見分け方

 対岸の火事と思うことなかれ。もしかするとあなたが今やっている方法も、“ニセモノ”かもしれない……!!

「今回のWELQ(ウェルク、以下同)の問題は、是正云々で済む話ではありません。そもそも彼らの発信の動機は“正しい医療情報を伝えるため”ではなく、自分たちの“儲け”のため。生死にも関わる医療情報なのに、インチキ情報でも、儲けのためには目立てばよかったんでしょう。ただ、そうしたインチキ医療情報サイトは他にもたくさんあり、ウェルクは氷山の一角と言えます。したがって、これを機会に、一人ひとりがインチキ情報を見抜く目を養うべきです」

 開口一番、こう警告するのは、後述するように、自身もこの医療情報サイト、ウェルクの被害にあった『五本木クリニック』(東京都目黒区)の桑満おさむ院長だ。同院長は、2013年3月から「正しい医療情報を提供」すべく個人ブログを開始。アクセス総数が、すでに100万を超える人気ぶりだ。

 IT大手『ディー・エヌ・エー』(DeNA。東京都渋谷区)が運営する、この医療情報サイト・ウェルク内の全記事が非公開になったのは11月29日のことだった。その約1か月前から、「記事の根拠が不明確」などの批判が相次いだことから、同社が検証したところ、いい加減な記事が多々あることが判明。同社はウェルクに続き、同様の手法で運営していた他の9サイトすべてを非公開にしている。取材した全国紙経済部記者が解説する。

「閉鎖されたDeNAのサイトは、いずれも“キュレーションサービス”をうたっていた。これはウェブ上のコンテンツを、ある特定のテーマや切り口で読みやすくまとめ、編集、共有、公開するもの。したがって、ウェルクは取材し、独自の記事を出していたわけではありません。同社は本業のモバイルゲームが苦戦する中、このサービスで広告収入を稼ごうとしていた。広告収入はサイトの閲覧数の多さで決まる。中でも昨年10月に開設したウェルクはコンスタントに閲覧数を稼げると、力を入れていました」

 すでにウェルクの月間アクセス数は延べ約2000万人。「白血病」「ヘルニア」など、ワード検索するとウェルクが堂々トップに来るケースも少なくなかった。

 実は、閲覧を増やすためには、記事の内容の充実より、ヒットしやすいキーワードが入った記事を多く掲載するほうが手っ取り早い。こうした手法を「SEO」(検索エンジン最適化)というが、そのため、ウェルクはヒットしやすいキーワードを複数入れ込み、かつ1日約100本もの記事を載せていたのだ。そして、その大量の記事を書くライターを、ネット上で“2000字1000円”の安値で探していた。

「これにはマニュアルがあり、DeNAが組織的に行っていた。そんな安い原稿料ですからプロとは言えない“にわかライター”がほとんどで、子育て中の主婦が内職していたケースも少なくないです。むろん、医療知識はド素人。ところが、内容を医療のプロがチェックする体制もない。これでは、トンデモ記事が出るのも無理はない」(前同)

「吉野家の牛丼でアレルギーのリスク」「牛乳などに含まれるラクトフェリンという成分が放射能を防ぐ」などの無責任な記事もあったという。冒頭で登場してもらった桑満院長に、具体的に、そのデタラメぶりを解説してもらった。

「適当に1つの記事を選んで読んだところ、結核に関するものだったんですが、正確には結核患者は年間2万人ほど発生しているんですが、それが4万人に。ところが、記事後半では2万人になっている。また、“粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)”の医学用語が“俗流血管”に化けていました。そうかと思えば、結核菌が“空中にふわふわと浮いている”という医学上、ありえない表現もありましたね」

 1つの記事の前半と後半で重要な数字が違ったり、文章の流れがちぐはぐになるのは、同じテーマの複数の記事をあちこちからつまみ食い(コピー&ペースト)した可能性が高いという。「別の胃がんの記事では、患者数と死亡率(5年生存率)を混同し、胃がんの死亡率は肺がんに次いで2番目なんて書いていました。プロ医療関係者から見れば、信頼度ゼロです」(前同)

 中でも桑満院長が絶句したというのが、「肩こりがひどいのは幽霊が原因?」と言わんばかりの記事。紹介すると、<“肩が重い”と訴える方を霊視すると、幽霊が後ろから覆いかぶさって腕を前に垂らしている、つまり幽霊をおんぶしているように見えるそうですよ。肩の痛みや肩こりは、たとえば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的トラブルを抱えた方などに起こりやすいようです>(同記事より)

 無断引用もゾロゾロあり、調べてみると、桑満院長のクリニックのホームページから153本、桑満院長の個人ブログからも45本引用されていたという。そのうえ、その無断引用の中には内容が改竄されていたケースさえあった。

「今年の夏、海外旅行でひどい日焼けをした患者さんが見えたんですが、水ぶくれが起きる2度のやけど(2度熱傷)に直接タオルを当てたため、タオルが皮膚と癒着してしまっていました。また、9月頃に診た患者さんは、一般的なアレルギー検査項目には入っていない“クリ”の検査を頼んできました。不思議に思って理由を聞いたら、2人とも私のブログに出ていたからという。しかし、私は2度のやけどでタオルを当てろなんて間違った対処法を書いたこともなければ、“クリでゴムと同様のアレルギー症状が出る”なんて書いたこともないんです」(桑満院長)

 調べてみたところ、ウェルク記事から桑満院長のブログに約200本ものリンクが貼られ、その中には、桑満院長のブログ内容となんら関係ないものさえあったという。では、こうしたインチキ医療情報を見分けるには、どうしたらいいのか。

「検索のトップに来たからと、安易にその記事に飛びつかない。まずは公立病院、大きな病院のホームページなど信頼性の高いところの基本情報をチェックする。そのうえで、各病院や医者など、個々が得意とする分野がありますから、そうしたところを覗いてみる。また、引用ないしリンクが貼られている場合は、そこにアクセスし、内容が異なっていないか、そして信頼に値する情報に基づいているか、きちんとチェックすることです」(前同)

 だが、私たち一般人がインチキ医療情報に接する機会は何もネットに限らない。特に高齢者の場合、インターネット自体やらない人も少なくない。が、それでもインチキ医療情報、健康法に踊らされる人は後を絶たないのだ。

 10年前から『NATROMの日記』というブログで、ネット上に溢れる“根拠のない医療情報”や“ニセ医学”に警鐘を鳴らし(アクセス数は延べ1000万以上)、書籍『「ニセ医学」に騙されないために危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(メタモル出版)を上梓している内科医のNATROM氏(匿名)がいう。

「“ニセ医学”に触れるのには大きく2つあり、一つは家族や親しい知人などからの口コミ。もう一つはテレビや雑誌などのマスコミからでしょう。口コミの場合、善意からのことでしょうが、多くの方は医療情報のプロではありません。また、マスコミの場合は注目を浴びやすくするために誇張したりする場合もあれば、広告との絡みもあります」

 NATROM氏の著書には、実に多くの具体的ケースが紹介されている。ステロイドは本当に悪魔のクスリか、がんは治療しないほうがいいのか、ワクチンは有害か、といった「現代医療編」。気功でがんは治るか、クリニックで幹細胞療法は可能か、といった「代替医療(民間医療)編」。

 さらにミネラル水、米のとぎ汁乳酸菌、酵素、各種健康食品、健康グッズなどの「健康法編」の3部構成なのだが、中でも2つ目の代替医療の場合、信じ込んでしまうと、既存の医療を拒否し、結果、死期を早めてしまう場合もあるから、問題は実に深刻だ。

 その一つに、放射線ホルミシス効果がある。大量の放射線被曝が有害であることに議論の余地はないが、少量なら有益ということで、自然放射線の10倍から100倍のラドンガスを発生させる装置を部屋に設置、あるいは同鉱石を床に敷き詰め、がんをはじめとする難病の治療をうたうクリニックがある。

「病気を抱え、大きな不安を抱えている場合、普通の医師は、がんは“治る”とは容易に言いませんが、そういうところは、えてして“治る”と簡単に断定します。だから、藁にもすがる思いで信じてしまうケースもあるんです」(NATROM氏)

 前出の桑満院長が言う。「私もブログで、そうしたところを批判したら、その医者が怒って電話してきて、訴えると言われたこともあります。医者が言っているから大丈夫とも言えないんです。私は、家族に危害が及ばないかと心配になるときもあります。ですから、NATROM氏が匿名なのも無理はないと思います」

 NATROM氏に、こうしたインチキ医学情報に騙されない方法を聞いた。「二つあり、一つはうまい話には気をつけること。たとえば、がん治療で“治る”と断定するのもそうですが、“すべてのがん”に効くなんてこともありえません。また、標準治療を全否定しているケースも完全にアウトですね。もう一つは、信頼できる主治医を持つこと。もし、今の主治医が信頼できないなら、別の医者を探しましょう。替える理由など、その気になれば何でもいいんです。今は少なくなりましたが、ともかくキチンと説明しない医者はダメ。問いにキチンと答えてくれる医者が一番です。医療情報に関して疑問などあれば、どんどん尋ねましょう」

 その他、医者らしき者が発信していてもニセ医者の可能性もある。ネットができない人も、周囲にお願いするなどして、厚生労働省の「医師等資格確認検索システム」で確認してほしい。そして医師の資格を確認できても、トンデモ医者の可能性もあるので、書籍などの掲載実績、批判を浴びていれば、その内容をチェックしてもらおう。一方、がんに関しては国立がん研究センターの「がん情報サービス」を活用し、それを基本とすべきだという。

 以上、巷にはびこるインチキ健康法に、くれぐれもご注意を!

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