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日産GT‐R産みの親・水野和敏「本当の自分の人生は、60歳を過ぎてから始まる」未来を創る人間力

[週刊大衆2017年03月13日号]

日産GT‐R産みの親・水野和敏「本当の自分の人生は、60歳を過ぎてから始まる」未来を創る人間力

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 日産時代、日産のグローバルなフラッグシップ車として、日産GTRを作ったんですが、開発の当初は社内から猛反発ですよ。“今更、量産ラインで作るGT-Rが、手作り生産世界ブランドのポルシェやフェラーリに、勝てるわけがないから、やめろ”って開発の身内からは半年間言われ続けました。

「GT-Rの主要開発実験は社内テストコースでなく、ドイツのニュルブルクリンクサーキットでやる」と言ったら、“実験部としては、絶対に許可できない”等もう社内総出で、潰しにかかってくる。“この忙しい時期に水野さんの趣味に付き合う気はない”って系列部品メーカーにも仕事を断られ、まともに相手にしてくれませんでしたね。

 でも、何か今までにない新しいものを創ろうとする時、反対されるのは、当たり前。人は、過去を見て生きているから、前例がないことはやりたがらない。会議でもてはやされるのは、誰でも分かっている過去のデータですよ。

 それは結局、過去の復習でしかないんですけどね。いうなれば“ユーザーが知っているものを作り替える”だけ。だから、車が売れないんですよ。極端な例え話かもしれないけど、モナリザが評価されているから、もっと素晴らしいモナリザの似顔絵を描こうとしているのと一緒。

 アップルがなぜ、ブランド力があるかって、キーボードをなくしたからでしょう。キーボードって、人とパソコンを繋ぐ一番大事なインターフェイス。“それをなくせ”って会議にかけたら、猛反対だったでしょうね。それをなくして、タブレットを作ったから、今のアップルがある。

 じゃあ、どうやって未来の物を創っていくかっていったら、それは、人の思考力なんですよ。日本の一番の問題は人口が減っていること。それって脳みその総数が減っているってことでしょう。ソニーだって、昔ならトップブランドだったのが、今はサムソンと比べられているんだから。日本の国力の低下は、思考力が落ちてきているってことですよ。

 逆にいえば、日本をここまで発展させたのは、団塊世代の思考力ですよね。だから、60代以上の人たちには、定年過ぎて、隠居するのではなく、その思考力を活かしてほしい。

 本当の自分の人生は60歳を過ぎてから始まると思うんです。定年になって、会社を出されるということは社会に出られるということ。

 会社にいれば、会社の枠でしか仕事はできません。子どもの養育もあれば、家のローンもある。でも60歳になれば、それもなくなっていることが多い。会社の枠にとらわれずに、本当に社会のタメになる仕事ができるでしょう。やってダメだったら隠居すればいいんですよ。俺も日産を定年で辞めて、台湾の自動車会社『裕隆』と仕事をしているけど、正直なところ辞めたくなったら、いつでも辞めますよ。

 ただ、会社の枠から出たら、知見が広がりましたね。今は、1個の車を造るというよりかは、自動車の新しい開発スタイルっていうものを提案していきたいなと。今の自動車会社は図体がデカすぎて、小回りが利かない。自動車造るのに、あんなバカでかい会社はいりませんよ。

 車体をゼロから造れる会社もあれば、サスペンションを造れる会社、組み付けができる会社もある。こういう会社を総合的に使いこなせれば、自動車会社本体の図体はでかい必要はないんですよ。

 スマホは半年から1年でできるのに、自動車の開発って3、4年はかかる。なぜかっていうと、大半がやり直しなんですよ。司令部に山ほど人がいるから、作戦が徹底されない。会議を重ねて、妥協の産物を産み出すだけ。

 少人数の司令部が、外部の力をかりて、新たな車を開発する。そんな日産ではできなかったことを台湾の会社と組んでやっています。

 60歳までは1日5時間は寝られていたけど、今は1日3時間。棺桶に近づいているんだろうなと思いますけど、会社の枠に捉われずに、社会に対して直接働きかけられるようになったんだから、まだまだ死ねないですよ。

撮影/弦巻 勝

水野和敏 みずの・かずとし
1952年、長野県千曲市生まれ。長野工業高等専門学校卒業後、72年に日産自動車入社。開発部門で、初代プリメーラなどを開発。89年から92年までNISMOでレーシングカーの開発とチーム監督を務め、世界王座を獲得。93年には日産自動車に戻る。07年には、カルロス・ゴーン社長から全責任を委任され、R35GT-Rを開発。予算、人員、時間を半分におさえる常識破りの開発手法で世界最速のマルチパフォーマンス・スーパーカーをたった3年で完成させた。13年に日産自動車を退社し、現在は台湾の裕隆グループのHAITEC社で開発担当上級副社長と併せて、日本のHAITEC Japan社の代表取締役を務める。仕事の傍ら、講演、執筆業でも活躍中。

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