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枕で寿命は5年変わる!? 安眠の友「正しい枕の選び方」

[週刊大衆2017年04月24日号]

枕で寿命は5年変わる!? 安眠の友「正しい枕の選び方」

 そばがら、羽毛、ヒノキ、パイプ……。いろいろな素材や形の枕があるが、どれを選べば安眠が手に入るのか?

 旅先で枕が変わったので、よく眠れなかった――こんな経験をされた方も多いのではないだろうか。合わない枕は熟睡できないだけでなく、肩こりや腰痛、さらには自律神経失調や免疫力の低下などのさまざまな病気を呼び込み、果ては寿命までも縮めてしまうという。ぐっすり眠れて、健康と長寿にいい枕とはいったい、どんなものなのか?

 そもそも、どうして枕が睡眠に重要なのか。まず、その理由から説明しよう。『枕と寝具の科学』(日刊工業新聞社)などの著書があるサイエンスライターの久保田博南氏によると、人間が枕を使うようになったのは、背骨の構造に起因しているという。

「人間の背骨は重い頭を支えるため、S字カーブになっています。仰向けに寝ると、このS字カーブが直線になり、頭が少し上がってしまいます。上がった頭を下から支えるために枕が必要になったのです」(久保田氏)

 枕選びには、ここが第1のポイントになる。つまり、ちょうどいい高さの枕であれば背骨や頸骨に負担をかけずに熟睡できるが、逆に高さが合わなければ、体に歪みが生じて筋肉痛や関節痛などの原因になるというわけだ。また、無理な姿勢で寝ることになり、睡眠の質も低くなりがち。あなたの枕が体に合っているか、ちょっとチェックしてもらおう。

□朝起きたときに手や足に痺れがある。
□肩こりや首の痛み、頭痛がある。
□よく、ぎっくり腰になる
□寝つきが悪く、夜中に何度も起きる。
□朝起きても気分がすっきりせず、昼間も眠気があり、ぼんやりすることがある。

 これらは枕が合っていない人に典型的な症状だ。寝具メーカーのアドバイザーでもある『タンタン整骨院』の小林敬和院長は、「特に首や肩が慢性的にこるという人は枕が合っていないことが多い」という。

「もっと言えば、枕が高すぎるんですね。枕を低くするように指導したら、肩こりや首の痛みが劇的に改善したというケースも少なくありません」(小林院長)

 熟睡できないことの弊害は、まだある。「人は寝ている間に成長ホルモンを分泌しています。熟睡できなくなると、この成長ホルモンが分泌されなくなり、疲れが残ってしまうのです」 こう説明するのは、健康枕に詳しい『高円寺整形外科』の大村文敬院長だ。

 成長ホルモンは、睡眠中に疲れを取るほかに、さまざまな働きをしている。たとえば、代謝を高め、脂肪の燃焼を促すのも、その一つ。また、免疫機能を正常に保ち、病気への抵抗力を上げ、生殖機能を正常に保つ働きもしている。成長ホルモンの分泌が低下すると、これらに不具合が生じるうえ、記憶力の低下や老化も進行していく。

 さらに、枕が悪くて熟睡できなければ睡眠中に自律神経が整えられなくなり、心拍異常や発汗、神経障害などの症状も出てくる。「睡眠不足が、うつ病のきっかけになることも多いのですが、枕を変えてよく眠れるようになったことで、うつ病が改善したケースもありました」(大村院長)

 また、不眠や睡眠不足の人は短命になるという研究結果も、国内外で報告されている。たとえば、カリフォルニア大学の研究では、睡眠時間と死亡率の間に明確な因果関係が認められることが報告されている。

 日本では、名古屋大学が11年間にわたって睡眠時間と死亡率の関係を調査した結果、睡眠時間が4時間30分未満の人の死亡率は、7時間睡眠の人と比べて男性で1.62倍、女性で1.60倍高かったという結果が出たという。枕が体に合わず、熟睡できなければ寿命も短くなるし、逆に良い枕で安眠する人は寿命も長くなるというわけだ。

 では、“体に合ったいい枕”とはどんな枕なのか? 読者の中には「もしかして、そばがらの枕?」と考えた人もいるはずだが、確かに枕の素材も、寝心地を決める重要な要素となるという。

 だが、大村院長によると、素材以上に大切なのは“枕の高さ”だという。どんな高さの枕がいいのか? 「高さは、その人の体格や普段の姿勢(猫背かどうかなど)に関係するため、個人差があります。私は“枕の上に仰向けに寝たとき、水の上に浮いているような感覚になれる高さ”が、その人に最も合った高さの枕だと説明しています」(大村院長)

 体が抵抗を感じない、気持ちいい枕が理想というわけだ。これは枕の高さを調整して試すうちに実感できるようになるというのだが、もっと簡単な方法はないものか? そこで、前出の小林院長は次の方法を教えてくれた。「まず、壁に背をつけて肩甲骨が当たるように立ちます。首のカーブの一番深いところ(壁から一番遠いところ)までの距離が、基本的な枕の高さになります」

 基本的に、高さは床に置いたときは5センチ、布団に置くと3センチくらいになる。「肥満体型や猫背の人はプラス1センチ、柔らかい敷き布団を使っているときはマイナス1センチといった微調整をする必要があります」(小林院長)

 枕は横向きに寝たときの高さも大切になる。横向きに寝たとき、額の真ん中、目と目の間、喉、胸の中央の線が一直線になるのが、自分に合った高さの枕なのだとか。高さの調整の次に大切なのは、枕の「硬さと形」。

「寝ているときに寝返りを打ちやすい枕。このために大切なのが、硬さと形なのです」(前出の大村院長) 実は、寝ているときに寝返りを打つことは非常に大切だという。寝返りを打てないと、体がずっと同じ姿勢のため、血液やリンパ液が1か所に滞り、体温にも偏りが生じる。このため、寝返りが打ちにくい枕だと、熟睡もできなくなる。

 寝返りが打ちやすい枕は、仰向けの状態から左右に動きやすいことがポイントになる。「仰向けに寝て、無理をせず、スッと左右に頭を動かして横向きになれるようなら、いい枕と言えます」(前同)

 フカフカして柔らかい枕では、これができなくなる。高級枕の代名詞である羽毛枕も寝返りを打ちにくいため、健康的な枕とは言えないという。「そばがら枕もスカスカで緩いものは頭が沈み込んでしまうので、いいとは言えません。枕の上で体ごとクルクルと回転できる硬さで、あまり沈み込まないようなものを選ぶのがコツです」(同)

 最近、中央をへこませた形状の頭が動きにくい枕も売られているが、これも寝返りを打ちにくいので、いい枕とは言えないという。形も、丸く膨らんだものより、全体的に平坦な形のほうがお勧めだそうだ。

 ちなみに、大村院長は冷え性の患者さんに「寒くても、なるべく靴下をはいたり、足を毛布でくるんだりしないほうがいい」と指導しているという。

「靴下などをはくと、寝返りが打ちにくくなるからです。逆にシルクのパジャマなどは寝返りが打ちやすいので勧めています。寝返りを打てることは、とても大切だからです」

 なお、寝返りが打ちにくい枕を使うと、寝相が悪くなったり、朝起きたときに枕を外した状態になっていたりするという。「これは典型的な寝返りを打ちにくい枕で、変える必要がありますね」(大村院長)

 なお注意したいのは、長年愛用している枕も悪い枕になってしまうことがある。「最初は高さがぴったりでも、何年も使っているうちに、ヘタったり、中央が凹んできたりしてしまうことがあるからです」(前同)

 また、体重が増えるなどして枕が体に合わなくなるときもある。3~5年ぐらいを目安に、枕の高さや凹み具合などをチェックすることも大切だ。

 さて、ここまで読んだ読者の中には、「でもなあ……今の枕は長年使って愛着もあるから」と思った人も多いのではないだろうか? だが、前出の久保田氏によると、自分の体に合った、いい枕に変えるのなら、別に寝苦しくなることはないという。「私も本を書くに当たって、六角形の枕を実際に使ってみたのですが、意外と具合がよくて、今も使っています」

 人間は人生の約3分の1を寝て過ごすといわれている。眠りの相棒は、しっかり選びたい。

<こんなにあった! 枕の素材の種類>
【天然】
●そばがら:吸湿性に優れ、通気性がいいので余分な熱を外に逃がしてくれる。汗かきにはピッタリ
●羽毛・フェザー:高価だが、保温・吸湿に優れる。水鳥の羽から採取する。柔らかく、やや安定性にかける
●ヒノキ:天然ひのき素材の匂いにリラクゼーション効果があり、質のいい眠りに導いてくれる
●ウール:羊の毛が使われ、球状に加工されていて復元力に優れるが、通気性に難点がある。放吸湿性は◎
●ラテックス:天然ゴムの一種で高反発枕に使われることが多く、柔軟性や反発力、通気性が優れている
●シルク:吸湿性は良いが繊維が長いため、へたりやすい。蚕の繭をわた状にしたもの。ほこりが出にくい

【人工】
●パイプ、ストロー:ゴツゴツ感があるのが難点だが、素材の寿命が長いので耐久性があり、通気性も良く、衛生的
●エステル(綿):合成繊維の中に空洞がある素材なので繊維が絡みにくいため綿ぼこりが出にくい。弾力性あり
●ポリエステル:わた状の人工繊維で、感触が良く、弾力性もあるが、へたりやすく、放吸湿性に乏しい
●低反発ウレタン:低反発で力が分散されるので寝心地が良い。暑いと熱がこもって蒸れ、寒いと硬くなる
●空気枕:ビニル素材の中に空気を注入して膨らませる。湿気が逃げにくく蒸れやすいが、携帯性は◎

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