日刊大衆TOP 娯楽

【武豊】うれしかったフランスからのG1騎乗依頼

[週刊大衆2017年05月22日号]

 騎乗依頼仲介者という言葉をご存じですか? 馬主さんや調教師の先生との間に入り、騎乗馬を調整してくれる方のことで、競馬サークル内ではエージェントと呼ばれています。この制度は大先輩、岡部幸雄さんがフリーになられたとき(1984年)に取り入れたもので、JRAが正式に認めたのは06年のことでした。じゃあ、それ以前はどうしていたのかというと――。

 競馬学校を卒業して厩舎に所属している間は、調教師の先生や先輩の後ろにくっついて、あれこれ、勉強できますが、フリーになるとすべてが自己責任。今のように携帯電話もない時代でしたから、自宅の電話に掛かってくるか、競馬場やトレセン、ときには牧場で直接会って約束を交わすというのが基本でした。

 競馬に限らず、どんな制度にもメリットとデメリットの両面があります。その中で、はじめは武田作十郎厩舎にお世話になり、騎手の根本……いい馬乗りとはどういうものなのかを教えていただき、先輩の河内洋騎手の背中を見てあれこれ勉強できたことは、ジョッキー武豊をカタチ作るうえで、とても大きな血肉となりました。

 これまで、4000を超える勝ち星を挙げてきましたが、そのひとつひとつの勝利が、“いい馬に乗せていただいている。馬に勝たせてもらっている”と心から思えるのは、そんな経験があるからだと思います。

 亡くなったメジロのオーナー、北野豊吉さんの悲願だった、父子3代による天皇賞制覇の夢を叶えてほしいという強い思いで依頼をされたメジロマックイーンとのコンビ結成。当時、競馬界を超えたブームを巻き起こしていたスーパーホース、オグリキャップへの騎乗依頼……いろいろありますが、最高に驚いたのは99年の夏……フランスのトップトレーナー、P・バリー調教師からいただいた一本の電話です。

「ジャック・ル・マロワ賞(仏G1)で、ウェイオブライトという3歳馬に乗ってほしいのだけど、お願いできますか?」 一瞬、何のことだか分からずにポカンとし、次の瞬間、僕は驚愕の声を上げていました。

 日本馬でもない、日本人オーナーでもない陣営から騎乗依頼をいただくのは、これが初めて。まさか、そんなことがあるとは夢にも思わなかったです。

 結果は、ゴール前で見せ場は作れたものの、優勝したドバイミレニアムから離されること3馬身差の4着。ムーラン・ド・ロンシャン賞、モーリス・ド・ゲスト賞に続く3個目の勲章はなりませんでしたが、いただいたこのオファーは大きな自信になりました。

 騎乗依頼をいただいたときは、“ありがとうございます”と心の中でつぶやき、レース前には、“今日はよろしくお願いします”と頭を下げる――いつも、どんなレースでも、しっかりと想いを込めて。G1レースだろうと、未勝利戦だろうと、その気持ちは同じです。

■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算4000勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】うれしかったフランスからのG1騎乗依頼

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.