日刊大衆TOP 芸能

氷川きよし「老人ホームで喜んでもらえたのが、歌手人生の原点」人を喜ばせる人間力

[週刊大衆2017年05月22日号]

氷川きよし「老人ホームで喜んでもらえたのが、歌手人生の原点」人を喜ばせる人間力

 やっぱり、人に喜んでもらえることが好きなんです。そもそも、歌の道に進もうと思ったのも、人に喜んでもらいたいからなんです。

 僕はすごく引っ込み思案な子どもだったので、どうやったら、自分を知ってもらえるのかなって考えた時に、歌をやってみようかなと思ったのが、歌を始めたきっかけで、当初は、ポップスを歌っていたんです。ただ、高校生になって、歌の先生がおじいちゃんの方で、“演歌を歌ってみないか”って言われて歌い始めた。

 薦められるがままに、演歌の練習をして、老人ホームを回りながら、演歌を歌ったんです。そしたら、おじいちゃん、おばあちゃんがすごく喜んでくれた。“若いのにエラいねえ”って。そのとき、生きているって実感が、すごく湧いたんです。

 今思えば、これが自分の歌手人生の原点で、初めて人に喜んでもらえる楽しさを知った瞬間でした。だから今でも、誰かのために歌っていないと、気持ちが入らないし、うまく歌えないんですよ。コンサートでは、足を運んでくれた方の顔を見ながら、歌うんです。

 もちろん、大勢の方が来てくださるときは、全員の顔を見ながらというわけにはいかない。でも、そういう時でも、お一人お一人と1対1で歌っているという想いで歌うことが、大事なことだなと思います。

 この前のコンサートでは、一緒に歌いながら聴いてくださるファンの方がいらっしゃったので、その人を見ながら、一緒に歌っている感じで歌っていました。でも、その人が途中で歌詞を間違えたりすると、自分もそれにつられて、“あっ、危ない危ない”ってなったりします(笑)。

 つい最近のコンサートでは、小学5年生の男の子が、最前列に座っていたので、その子に話しかけて、一緒に歌ったりしたんです。彼の中で、その光景が10年後も残っているかもしれないし、その経験がきっかけで演歌歌手を目指すようになるかもしれない。自分自身が、子どもの頃見たステージって覚えていますから。

 そう考えると、嬉しくてジーンときましたね。歌手をやっていて、よかったなと思う瞬間です。

 ただその分、責任は重大ですし、大変なことも多いですよ。来てくれる方にとっては、次のコンサートに来られるのが、5年後とかになってしまう人もいるわけです。もしかしたら、一生に一度かもしれない。だから、自分がどんなに体調が悪くても、絶対にステージには立たなくてはいけないわけです。

 それに、こういう世界ですから、浮き沈みは当然あります。僕の場合は、ありがたいことに、いろんな方に背中を押してもらい、最高のスタートを切れましたから、過去の自分を追い越せない辛さみたいなものを感じる時期もありました。

 デビュー10周年の時には、これから10年、どうやったら続けていけるかってすごい悩みました。お客さまにとっての氷川きよしは、若くて、はしゃいでいる20代の頃のイメージが強かった。でも、僕は30代になっていて、お客さまが求めるものを出すことができなかった。そこに、葛藤を感じたこともありました。

 でも、いい意味での開き直りで、今の自分が、持っているものが出せればいいのかなと、自然体でいいのかなって思うようになったんです。そう思えるようになって、歌を歌って人に喜んでもらうという楽しさを再認識できました。

 そういう時期を経験した分、今回の『男の絶唱』を聞いたときは、ビビビッときましたね。生きていれば、心が荒むこともあるけど、それでも純な心は忘れずに生きていこうというような歌詞があるんです。

 浮いて沈んで、その過程で成長があるから、またがんばろうと思える。ああじゃない、こうじゃないと悩みながら、昨日の自分より少し成長していれば、それでいい。

 30代最後に、今の自分だからこそ、歌える曲に巡り合えて本当に幸せだなと思います。

撮影/弦巻 勝
スタイリスト/伊藤典子(hoop) 衣装協力/金万 ヘアメイク/加藤恭子

氷川きよし ひかわ・きよし
9月6日、福岡県生まれ。00年に『箱根八里の半次郎』で演歌歌手としてデビュー。同曲で、日本レコード大賞最優秀新人賞など、数々の賞を受賞し、同年末に『紅白歌合戦』出場を果たす。以後、17年連続出場。08年には代表曲『きよしのズンドコ節』で大トリの大役を務め、演歌界を代表する歌手に。最新曲は、シングル30枚目となる『男の絶唱』。

氷川きよし「老人ホームで喜んでもらえたのが、歌手人生の原点」人を喜ばせる人間力

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.