氷川きよし「老人ホームで喜んでもらえたのが、歌手人生の原点」人を喜ばせる人間力の画像
氷川きよし「老人ホームで喜んでもらえたのが、歌手人生の原点」人を喜ばせる人間力の画像

 やっぱり、人に喜んでもらえることが好きなんです。そもそも、歌の道に進もうと思ったのも、人に喜んでもらいたいからなんです。

 僕はすごく引っ込み思案な子どもだったので、どうやったら、自分を知ってもらえるのかなって考えた時に、歌をやってみようかなと思ったのが、歌を始めたきっかけで、当初は、ポップスを歌っていたんです。ただ、高校生になって、歌の先生がおじいちゃんの方で、“演歌を歌ってみないか”って言われて歌い始めた。

 薦められるがままに、演歌の練習をして、老人ホームを回りながら、演歌を歌ったんです。そしたら、おじいちゃん、おばあちゃんがすごく喜んでくれた。“若いのにエラいねえ”って。そのとき、生きているって実感が、すごく湧いたんです。

 今思えば、これが自分の歌手人生の原点で、初めて人に喜んでもらえる楽しさを知った瞬間でした。だから今でも、誰かのために歌っていないと、気持ちが入らないし、うまく歌えないんですよ。コンサートでは、足を運んでくれた方の顔を見ながら、歌うんです。

 もちろん、大勢の方が来てくださるときは、全員の顔を見ながらというわけにはいかない。でも、そういう時でも、お一人お一人と1対1で歌っているという想いで歌うことが、大事なことだなと思います。

 この前のコンサートでは、一緒に歌いながら聴いてくださるファンの方がいらっしゃったので、その人を見ながら、一緒に歌っている感じで歌っていました。でも、その人が途中で歌詞を間違えたりすると、自分もそれにつられて、“あっ、危ない危ない”ってなったりします(笑)。

 つい最近のコンサートでは、小学5年生の男の子が、最前列に座っていたので、その子に話しかけて、一緒に歌ったりしたんです。彼の中で、その光景が10年後も残っているかもしれないし、その経験がきっかけで演歌歌手を目指すようになるかもしれない。自分自身が、子どもの頃見たステージって覚えていますから。

 そう考えると、嬉しくてジーンときましたね。歌手をやっていて、よかったなと思う瞬間です。

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