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貯金500万円で「老後を楽しく暮らす方法」

[週刊大衆2017年10月30日号]

貯金500万円で「老後を楽しく暮らす方法」

 誰もが不安を感じる引退後の生活費。「そんな額はとても……」と嘆く前に、本当に必要な金額と情報を知るべし!

■退職時に3000万円の貯金は必要!?

 60歳の退職時に、3000万円の貯蓄がないと老後は破綻する! そんな“標語”をよく耳にする一方、老後を間近に控えた50代であっても、約3割の世帯が「貯蓄ゼロ」(金融広報中央委員会)という現実がある。もちろん、貯金がゼロでも「退職金があるじゃないか」と考えるだろう。しかし、日本の労働人口の3割しか占めない大企業でも、退職金の平均は2000万円。残り7割の一般市民にとって、3000万円のハードルはかなり高いといわざるをえない。事実、本誌でアンケートを取った結果、読者で最も多かった貯蓄額は500万円。これでは3000万円にはほど遠く、定年まで地道に働いても悲惨な老後が待っているとなると、暗~い気持ちになってしまう。

 では、貯金500万円で十分な老後を過ごすにはいったい、どうすればいいのか。実はまず、〈退職するまでに3000万円の貯蓄が必要〉という、ちまたの常識を疑う必要がある。そもそも、この常識の根拠は、生命保険文化センターのアンケート調査にある。これは、夫婦2人で老後にゆとりある生活を送るには、月36万6000円の収入が必要だという調査結果を基に、その暮らしを平均寿命まで維持するには、年金の収入では3000万円不足するという考えから弾き出された数字なのだ。

■年金、定年後の常識破りと「老後設計の基本公式」

『人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社、共著)の著書などで知られる経済評論家の山崎元氏は、「個人の生活を一律的かつ平均的に出しているところに無理があります。貯蓄額に合わせて分相応な生活と計画的なお金の使い方を心がけていれば、そうひどい老後にならないでしょう」と、心強い言葉をくれるが、では、具体的に、どうすればいいのか。まず見てほしいのが、下の方程式。山崎氏がズバリ、「老後設計の基本公式」と呼ぶものだ。「この公式のいいところは、個々の貯蓄額などに合わせて現実的な“解”を求められるところ。もし、公式に当てはめる前提条件(数字)に変化がありそうでも、簡単に計算し直すことができます」(前同)

●厚生年金、国民年金の受給年齢を遅らせる

 ただ、この公式を説明する前に、“2つの常識”を見直す必要がありそうだ。1つ目の常識は、公的年金(厚生年金、国民年金)を支給開始年齢の65歳から受給することである。「公的年金は受給開始を遅らせることによって、1か月当たり0.7%も受給額を増やせます。受給年齢は70歳までの5年間遅らせることができ、その場合の増額幅は42%にもなるんです。たとえば、65歳支給開始年齢時に年間200万円の年金を受給できる人なら、最大の増額率を反映した場合、年に84万円も多い284万円を受け取ることができます」(同)

 つまり、70歳から受給すれば、民間の個人年金に加入しているのと同じような上積み効果が期待できるわけだ。個人それぞれの年金支給額は、定期的に送付される『ねんきん定期便』で確認できるから、その金額を1.42倍してみればいい。これで70歳からの年金収入が、いくらになるかが分かる。山崎氏によると、82歳まで受給すれば、生涯の年金受給額は、通常のケースより多くなるという。

●奥さんにパートで働いてもらう手も

「問題は、定年退職した60歳から70歳までの“赤字分”を、どう埋めたらいいかですが、それを埋めるには働くのが一番です。再雇用制度がある会社なら、それを利用してもいいですし、現役時代に培ったスキルを生かせる仕事に、新たに就くのもいいでしょう」(前同)

 この、リタイア後も働くということが、2つ目の常識破りだ。実は、この選択には思わぬ“特典”までついてくると話すのは、大学病院の看護師だ。「男性の場合、定年後に体調を崩しやすくなったり、あるいはボケやすくなるというケースが少なくありません。急に仕事がなくなって時間を持て余し、没頭できる趣味を見つけられず、生活ペースを崩してしまうんです。体が動くうちは働き続けることが、健康をキープするうえで重要な要素と言えます」

 また、必ずしも男性が働かなければいけないわけではなく、「専業主婦の奥さんにパートでもいいので働いてもらう」(前出の山崎氏)ことでもいいそうだ。

■「老後設計の基本公式」に当てはめて計算

 2つの常識破りを取り入れたうえで、先に触れた公式を利用してみよう。国税庁の「民間給与実態統計調査」(2015年)を基にした60代男性の給与所得額は約372万円。60歳から69歳まで、その平均からやや少なく見積もり、年間350万円稼いだと仮定し、公式に当てはめる。ここで問題となるのは、「A」の保有資産額(貯蓄額)だが、ここに、500万円を当てはめよう。そこから、本来なら65歳からもらえる年金(p=200万円)に支給までの年数(a=5年)を掛け合わせた数字(p×a=1000万円)を差し引くと、500万円の赤字となる。しかし、前述した通り、退職後も69歳まで毎年350万円ずつ稼ぐと、(W=350万円)×(b=10年)で計3500万円(w×b)が弾き出される。

 次の問題は、「H」(最晩年までに残したい資産額)を、いくらに設定するか。一般に必要とされる額は1500万円。内訳は、老人ホームへの入居一時金(1000万円)といざというときの備えなどの合計(500万円)。それだけあれば安心だが、老人ホームも、公的施設に入れば一時金はかからないので、その分を削り、500万円で計算してみよう。次に難しいのは、分母となる「n」(想定余命年数)の設定だ。「日本人男性の平均寿命は約81歳ですが、そこには幼児で亡くなるなどのケースも含まれています。60歳以上に限ると、余命年数はもう少し高くなるはず。なので、90歳から95歳と想定してみましょう」(同)

 ここではnを90と仮定して計算すると、「d」の「年間取り崩し額のメド」は約83万円。それに70歳から想定余命の90歳まで受給できる年金額(p)の284万円をプラスして「年間生活費のメド」(y)は367万円。これを1か月当たりにすると、30万5000円となる。生命保険文化センターが想定した36万6000円には及ばないが、この金額があれば、介護が必要になった場合の老人ホームの月額利用料などを含めても、夫婦2人なら暮らせそうだ。

●海外旅行など、趣味や娯楽も楽しめる

 事実、『「老後貧乏」はイヤ!』(日本経済新聞社)などの著者で家計再生コンサルタントの横山光昭氏は、生活費の目安について「家賃や住宅ローンを除いて、夫婦2人で月に22万円前後で生活している方は多くいらっしゃいますし、この生活費でもカツカツ感はないようです」と話すように、仮に生活費を22万円とすれば、先の公式で得られた生活費(月30万5000円)との差額(8万5000円)を貯蓄に回し、海外旅行や自宅のリフォーム代などに使うことができる。趣味や娯楽を楽しめる豊かな老後を謳歌できると言っていいはずだ。

■健康へのこだわりから食費が増えるケースも

 一方で横山氏は、老後生活の家計について次のように警鐘を鳴らす。「退職後はつきあいもなくなるから、現役時代より食費が減ると思っていたら、“量より質”に転換。健康に良い物をとこだわって、食費が増えたという例があります。また、年齢に伴い手間をかけなくなるようになり、惣菜や弁当が増えることで、食費が増大するケースもあります。このような、自覚があまりないまま少しずつ、出費が増えていく“メタボ家計”には注意が必要です」

■医療保険をどうするべきか

 また、老後の出費を考えるうえで、誰もが気になるのが保険だろう。「死亡保険に関しては、子どもが成長して保障の必要がなくなったということで解約される方も多いように、必要性を感じなければ、契約を維持しなくてもいいかもしれません」(前同)

 問題は、医療保険をどうするかだ。加齢とともに病気のリスクは高まるため、その扱いは難しいところ。「病気がちで入退院を繰り返している人や、医療費に回す貯金がまったくない場合は別ですが、日本には高額療養費制度がありますから、“医療保険に入るのが当たり前”という考えは改めるべきでしょう」(同)

 高額療養費制度というのは、自己負担額が高額の場合、一定金額を超えた額が、後に払い戻されるというもの。つまり、日本国民は何もせずとも“最強の医療保険”に入っているわけだ。

■車やスマホ代を見直し

 横山氏によると、見直すことで出費を減らせる部分は他にもあるという。「たとえば車です。必要なときにだけ使えるカーシェアリングにすることで、税金や車検代、保険代といった維持費を減らせます。また、携帯電話を格安スマホにするなど、通信費の削減は簡単に支出を減らせる分野でもあります」

 事実、本誌の副編集長Kも、大手携帯会社から格安携帯に乗り換えたところ、たちまち毎月6000円も通信費が下がったのだ。これは、年間にすれば7万2000円の削減である。

 以上を要約すると、老後にお金に困らない最大のポイントは「70歳から4割増しの年金をもらうこと」で、そのために、退職後の10年間を、どうしのぐか。また、生活自体を見直して、無駄な出費は抑えることだ。これを守れば、先に計算したように、定年時点で、たとえ貯金が500万円しかなくても、しっかりとした生活費を確保でき、しかも毎月8万円強を趣味や旅行に当てられるのだ。

 不安ばかりあおられる老後の生活。まずは、あなたの生活を、もう一度見つめ直してほしい。

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