「車にたとえればアイドリング状態。待機時間を利用して、脳は膨大な情報、記憶を確認し、整理しているのです。この作業中は、頭を使っているときの15倍ものエネルギーが消費されます。このDMNこそ、脳の若返りと密接な関わりがあるのです」(前同)

 事実、アルツハイマー型認知症の患者は、DMNのつながりが弱いことが分かっている。DMNを強化するために重要なのは、ぼんやりする時間を持つことだという。脳が情報整理をするための時間を確保すべく、視覚、聴覚といった情報をシャットアウトする“無の時間”が必要なのだ。

「ところが、最近は電車の移動中をはじめ、一日中スマホなどIT機器から目を離さない人が多い。この状態が続くと脳過労に陥り、うつ病になる人もいます。認知症のリスクも高まり、“スマホ認知症”との言葉もあるほどです」(同)

 これに関連して、瞑想をするのも効果的だという。前出の生田氏は語る。「米カリフォルニア大学の研究で、座禅や瞑想をする人と、そうでない人の脳を比較したところ、前者は、海馬をはじめとする領域が拡大していたそうです」

 続いて、働き盛りの人が注意したいのが、複数の仕事を同時にこなすこと。会議に使う資料を作成しながら、スマホで飲み会の店を検索、取引先からの電話に対応……。実は、これが脳への負担になり、老化の原因になってしまう。「複数、それも多いほど、脳をより働かせる、イコール、脳が活性化するというのは誤解。逆に、脳の処理能力がパンクしやすくなります」(前出の奥村氏)

 一つ一つの仕事を終わらせてから、次の作業へ取りかかりたい。さらに、時間がないからと、なんでもネット通販に頼るのは考えもの。本は本屋で買い、映画は映画館で観るなど、“足を運ぶ手間暇”を惜しまないことも、脳のためには大切だという。「本屋に行けば目的以外の本にも接することになり、多くの刺激を受けます。映画館に足を運べば、それなりのオシャレもするし、上映時間に間に合うように移動し、見終わったあとに外で食事をしたりもするでしょう。そういった一連の段取りを考えて行動することが、脳にとって刺激になり、頭をなまらせないのです」(前同)

 加えて、行ったことのないスポットを新規開拓すると、さらに良い。「新たなことを経験すると、脳が若々しい状態となり、もの忘れなども起こしにくくなります」と言うのは、精神科医の樺沢紫苑氏。定食屋、飲み屋などから、着る服まで、年を重ねるごとに“いつもの”に落ち着きがちだが、脳のためには冒険する勇気が必要なのだ。

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