■60年代のTBSの凄まじい執念

――作品の演出へのこだわりなどをお聞かせください。

 劇中で「テレビ・ヴェリテ」という言葉が出てくるのですが、語源は「シネマ・ヴェリテ」という映画運動というかジャンルのようなものです。「ヴェリテ」というのがフランス語で「真実」という意味で、ロケでカメラと音声を同時収録して、インタビュー対象のありのままを記録していくような作品です。その中心人物にジャン・ルーシュという人類学者兼映画監督がいて、彼の作品シネマ・ヴェリテを見た萩元晴彦(67年版『日の丸』のディレクター)らが『あなたは……』『日の丸』を制作したという経緯があるので、今回の僕の作品でもそういったフランスのヌーヴェル・ヴァーグとかと深い部分で繋がっているように思います。

 ゴダールとかジャン・ルーシュとかちょっと違うけどジョナス・メカスとか、そういう人たちが作ってきた実験映画というか日記的な映画の手法というか、すごい狭い話ですね(笑)。フランスのヌーヴェル・ヴァーグとかは、映画というメディアを解体してハリウッド的なものではない新しい映画を再構築する、ストーリーを伝えるだけではないんだ、みたいな感じですよね。

 そういう60年代的な、カウンターカルチャーというか、既存のものをぶっ壊そうという、ぶっ壊した先にあるのがテレビという新しく生まれたメディアじゃないか…みたいな異常な熱量が『あなたは……』とか『日の丸』にはあるんですよね。

 今YouTuberとかが間をつまんだ編集をしたり、テロップがどんと出たり、テレビのメソッドとは少し違う編集方法をやっているじゃないですか。あれはテレビという成熟しきったメディアを、ちょっとマイナーチェンジしてるって印象だけど、60年代のTBSのドキュメンタリーの一部には、もっとめちゃくちゃにぶっ壊してやろうという凄まじい執念があるんですよ。壊したくて仕方なくて、もう視聴者が理解できない範疇まで行っちゃってるものもありますよ。

 <番組概要>

『日の丸 それは今なのかもしれない’22』

※TV版はTVerで期間限定公開中(~2022/3/6 24:57予定)

<映画祭概要>

TBSドキュメンタリー映画祭 2022

開催期間:3月18日(金)~3月24日(木)7日間

開催場所:(東京)ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次開催

公式HP:https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/

公式Twitter:@TBSDOCS_eigasai

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