関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■高校時代に聴いた浪曲に感動師匠に弟子入りして浪曲師に!
「芸に艶がある」と注目される若手浪曲師がいる。京山幸太さん(27)は古典の大作『会津の小鉄』の連続読みに挑むかと思えば、新作『ギャルサー!』ではパラパラまで踊るなど、硬軟幅広く活躍。上方浪曲界期待のホープなのだ。
出身は兵庫県の加古川。中学・高校時代は野球部のエース。しかしボールが左目に当たり、視力を失う。
野球が続けられない中、友人から「バンドでボーカルをやらないか?」と声をかけられた。
バンド活動を続けるうちに、次第にプロのアーティストになりたい気持ちが芽生え、そうして、ある人に相談を持ち掛けたのだ。
「キャンディーズを育てた作詞・作曲家の穂口雄右さんを、ツイッターでフォローしていたんです。そしてメールで、おそるおそる“どういう勉強をすればプロになれますか”と質問をしました。すると、“浪曲を学びなさい。浪曲には、日本のポピュラー音楽の原点がある”と」
高校生の彼は浪曲を聴いた経験がない。
「浪曲って、なんだ?」と、ユーチューブで三波春夫と村田英雄が交互に忠臣蔵を語る掛け合い浪曲を視聴した。
「こんなに聴衆を引き込む芸があるのか! と驚きました。忠臣蔵の知識は皆無なのに、情景が想像できたんです」
大学進学のため、大阪へ出てきた彼は、吹田で浪曲教室を開く二代目・京山幸枝若の門を叩く。
そして、「半年の間に一席を、しっかり語れたら弟子にする」と課題を与えられ、稽古をつけてもらいながら必死に取り組んだ。
「師匠から“声を作れ”と厳しく教わりました。自分の声域を越えた、頭から突き抜ける高くて太い声が出なければ、浪曲は語れないと。そのため淀川の河川敷で、対岸まで声を届かせる訓練をしました」