細田善彦(撮影・弦巻勝)
細田善彦(撮影・弦巻勝)

 僕は24歳のときに、俳優の仕事から一時期離れていたんです。

 この仕事は15歳ぐらいからやっているんですが、ずっと仕事以外のやりたいことをすべて後回しにしてきていて。たとえば、プライベートで先々の旅行の計画をして、その日程にオーディションのチャンスが舞い込んだらどうしようと考えてしまって、止めたりとか。でも、そんな自分が視野の狭い人間に思えて、自分が今、一番やりたいことをきちんと考えました。そこで、出てきた答えが海外で友達を作るということでした。たぶん、自分の常識とは違う世界に触れたかったんだと思います。

 まあ、仕事のことは帰国したときにまた考えれば良いやって。そういう楽観的なところがありまして(笑)。

 僕の中では海外といえばアメリカで、ニューヨークに行って、1泊2500円くらいで、風呂とトイレが共用、スーツケースも広げられないくらいの狭さのホテルに泊まって、語学学校に通いました。でも、生徒は自分と同じアジア人ばかり。当然なんですけど、僕はアメリカ人の友達が欲しかったので、3日ぐらいで辞めたんです(笑)。

 その後、タイムズスクエアに出向いて、お店で隣になった方々にとにかく話しかけたけど、英語がうまくないから通じないし、相手にもされない。そもそも観光地だから生粋のニューヨーカーもあまりいない。そこでマンハッタンのブルックリンにある地元の人が集まるバーに通うことにしたんです。“話しかけてください!”ってオーラを出してたら、通い始めて3日目に店員さんが「君は何をしにここに来ているんだ」って言ってくれて! 友達が欲しいという話をしたら、すぐにいろんな人を紹介してくれたんです。そのうちの一人から「ソルトレイクに来るなら家とバイクを貸してあげるよ」と言われ、すぐにルームシェア生活が始まりました。

 そこで生活していたときに、ルームメイトたちとリビングで映画を見ていたんですが、ふと、「自分が出演している作品を彼らが見てくれたら、喜んでくれるんじゃないか」と思ったんです。それが彼らへの恩返しだと。その瞬間、やっぱりまた俳優の仕事をやろうと決心したんです。

 復帰したときは、約1年半のブランクがあったので、「もう一回、やってやるぜ!」と肩に力が入り過ぎて空回りしていたと思いますね、今振り返ると。最近は、もっと素直にいただいた役柄に入り込めていると思っています。

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