■切なさ爆発の赤楚衛二

 それでいて、石子と羽男の距離感は絶妙で、恋模様にはなりそうでならない。裁判に勝ったあと、羽男が自宅前に「もう少し飲まないか」と誘ったのだが、次のシーンは部屋の中ではなく、マンションの非常階段。石子の「部屋に入るわけないじゃないですか」というセリフが印象的だった。

 視聴者はツイッター上で、「飲みに誘われても部屋に寄らない石子でよかった。恋愛関係になったらつまらないもんなー。今ぐらいの距離感でおねがいします」「非常階段で話す場面、2人の会話が印象的だった。関係性が変化していった回だったな」など、好意的に受け取っていた。

 さらに、「潮法律事務所」のアルバイト・大庭蒼生を演じる、赤楚衛二(28)の“当て馬”を予感させる繊細な演技も評価が高い。今回は、違法カジノ店でピンチに陥った石子を、大立ち回りで助けるが、帰りのタクシーに一緒に乗ることが出来ず、羽男を連れて帰る彼女を見送る表情が切なかった。

 法廷を軸としたドラマのストーリーをジャマせず、適度なスパイス程度に留める、恋愛要素の入れ方のバランスが絶妙。同期放送中の『テッパチ!』(フジテレビ系)のように、最近は視聴者サービスのつもりなのか、無理やりな恋愛要素を入れるドラマが少なくない。

 その結果、『石子と羽男』は今回の平均世帯視聴率が8.4%(ビデオリサーチ社調べ/関東地区)と番組最高を記録。一方で、『テッパチ!』は4%台と爆死状態続き。今後、お仕事系ドラマを作るとき、どちらを見習ったほうが良いのか一目瞭然だろう。(ドラマライター/ヤマカワ)

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