■坂元裕二氏のこだわりとは?

 視聴率が初回の6.6%から、第2話が3.9%、第3話が3.8%と、途中打ち切りが噂されるレベルの状態が続いていたが、坂元氏のパワーワード満載の脚本に細かい演出、なにより俳優陣の飛び抜けた表現力もあり、評価は急上昇。視聴率もジャンプアップした。

 クセの強さを全面に押し出した初回から、多くの視聴者が離脱したが、脚本の坂元氏には織り込み済みだったのかもしれない。それは、18年に放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)の「生きづらい、あなたへ〜脚本家・坂元裕二〜」での発言からうかがえる。

 取材時は『カルテット』が放送されたあとで、坂元氏は「少数派のために書きたい。(中略)“こんなふうに思う人は少ししかいない”っていう人のために書きたい。“ああ私だけが思っていたんじゃなかったんだ”って」などと、自身の脚本のこだわりについて語っていた。

 林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑(35)が演じる4人のメインキャラは、多数派の人々とは共感できそうにない問題を抱えている。しかし、それは、リアルな社会で生きづらいと思っているような、少数派の人たちの共感を受け、癒やしや救いになるのかもしれない。

 世帯平均視聴率のトップを走っていた『オールドルーキー』(TBS系)まで、第6話で9.5%と1ケタ台にダウン。2ケタを維持している作品がなくなり、5%台に届かない作品も少なくない、苦戦の続く夏ドラマの中で、『初恋の悪魔』が中盤から勢いづき、一気に話題をさらいそうだ。(ドラマライター/ヤマカワ)

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