■“あこぎな恋”の相手は“40歳”も年上の女性!?

 まず西行と待賢門院の女官たち、すなわち女房らとの交流がいくつか確認でき、彼女たちの多くは身分の高い公家の息女だから、上臈女房に当てはまる。

 中でも、注目されるのが待賢門院の死後、小倉山(京都市右京区)で隠棲した中納言という女房と西山(洛西地域の別称)に住んだ堀川という名の女性。

 この二人の女房のうち、西行と晩年に至るまで歌のやり取りを交わしているのが堀川だ。

 西山の自分の住居の前を西行が素通りした際、浮き雲に隠れる月と西行を掛け合わせ、チクリと彼の薄情さを恨むような歌を詠んでいる。

 もちろん、堀川と西行が一夜を共にしていたとしてもずっと以前の話だから、この時点ですでに男と女の関係ではなくなっているが、確かに当時の関係を思わせる話だ。

 こうしたことから随筆家の松本章夫氏は堀川を西行のお相手としている(『西行-その歌その生涯』)。

 通説に従うと、彼女は西行より四〇歳年上で、二人が男女の関係になるとは思えないといわれてきたが、彼女の出生年が見直され、西行との年の差は一三歳まで縮まった(『同』)。

 ちなみに、待賢門院は西行より一七歳年上だ。

 結果、西行の相手を堀川と決定していいのかというと、そこに疑問がないわけではない。相手が堀川クラスなら、崇徳上皇が“あこぎな恋”と西行を窘めるほどの身分ではないからだ。

 はたして一七歳年上の待賢門院か、一三歳年上の堀川なのか。

 どちらにしても、若い頃の西行は今でいう熟女好きで、なおかつ、恋に一途な男だったのだろう。

跡部蛮(あとべ・ばん)1960年、大阪府生まれ。歴史作家、歴史研究家。佛教大学大学院博士後期課程修了。戦国時代を中心に日本史の幅広い時代をテーマに著述活動、講演活動を行う。主な著作に『信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた』『信長、秀吉、家康「捏造された歴史」』『明智光秀は二人いた!』(いずれも双葉社)などがある。

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