■三谷は「義村黒幕説」を採用した大河ドラマを強く意識していた

 山本耕史が三谷作品の常連で信頼されていること、「策略家」を演じさせると本当にハマる役者であることも、「義村ラスボス説」に拍車をかけている。

「北条義時の甥にあたり、三代将軍の源実朝は1219年に実朝の兄で二代将軍だった源頼家の子“公暁”に暗殺されますが、この際に義時も実朝もろとも葬ろうと義村が裏で画策。不首尾に終わると、最後に公暁を殺して同年、駿河守に任官した、という説があるんです。

 実際に大河ドラマでは79年の『草燃える』でその説を採用していました。ちなみに『草燃える』の北条義時は松平健さん(68)、実朝は篠田三郎さん(73)、そして三浦義村を演じていたのは藤岡弘、さん(76)でした。三谷さんはこの『草燃える』に感銘を受けていることでも知られています」

■「頼朝の最期」は40年越しに三谷が描きたかったものだった

 その一例として源頼朝の存在がある。『鎌倉殿』では物語前半の主人公といってもいい存在として大泉洋(49)が演じ、『草燃える』では主人公として石坂浩二(81)が演じていたが、その頼朝の最期について『文藝春秋』1月号で三谷はこう語っている。

《「草燃える」が放送されたとき、僕は18歳でした。毎週、次の日曜がやってくるのが楽しみで、頼朝が死ぬ回のときには、放送日まで頼朝に関する本を読んでイメージを膨らませ楽しみにしていました。

 ただ、いざ放送をみると、僕が描いていたものとは違っていた。当時は脚本家になるなんて夢にも思いませんでしたが、その日以来、僕なりに思った「自分だったら、頼朝のラストはこうする」という構想をあたため続けていました。

 今回、40年越しにその夢が叶います。「草燃える」を“上書き”して皆さんの心に残るような作品をつくることが、僕とスタッフの大きな目標です》

 単に史実をなぞるだけでなく、脚本家の大胆な再構築が魅力となる大河ドラマ。ラスボスとして北條義時・小栗旬の前に立ちはだかる三浦義村・山本耕史が、見られるかもしれないー-。

『NHK大河ドラマ 鎌倉殿の13人』

https://www.nhk.or.jp/kamakura13/

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