■『ちむどんどん』制作陣の誤算

 違いといえば、大したトラブルが起こらず、これまでよりノンビリした展開だったこと。そして、舞台が沖縄になったこと。これまでは、イタリア料理店で修業し、恋愛・結婚のトラブルが延々と続くなど、沖縄を感じさせる描写が少なかった。終盤の視聴率を見る限り、視聴者は、もっと沖縄の雰囲気を楽しめるドラマを求めていたのかもしれない。

 同ドラマは、沖縄本土復帰50年を記念して制作されたのだが、戦後の沖縄の生活や人々の思いなどは、わずかしか描かれなかった。沖縄戦、基地問題、本土での過酷な生活など、朝の時間にはデリケートすぎると考えられたのだろう。また、扱い方について沖縄の各方面から意見が寄せられたため、制作陣が混乱したことが噂されている。

 その結果、描かれたのは、何度痛い目にあっても凝りない、賢秀の借金などのドタバタ劇。そして、三姉妹の恋愛と結婚をめぐるエピソードだ。穴埋めとしてそれらを派手に展開すれば、沖縄要素が少なくても人気を得ると考えたのだろうが、視聴者からは総スカンをくらってしまった。また、ヒロインが、沖縄ならではの“おおらか”な人柄だったのだが、それが“鈍感”に誤変換されたのも失敗だろう。

 朝ドラは半年の長い期間の放送なので、脚本や演出の方向性がブレてしまうなど、仕方ない部分はあると思うが、読みが甘かった。最終週は、暢子が沖縄やんばるに移住し、地元の食材を使った食堂を開く展開になるようだ。最後ぐらいは沖縄を満喫して見終えたいものだ。

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