■さりげなく描かれていた不吉な「死亡フラグ」

 湊斗の家で想と紬は顛末を聞いたが、ここで想は「光君、ごめん……俺が引き留めちゃって。お姉ちゃん帰ろうとしてたんだけど、俺が引き留めたから遅くなっちゃって」とウソをついた。

 もちろん湊斗は何となく事実を察していたものの言うわけにもいかず、「湊斗くんがよかった。姉ちゃんの彼氏」と光が涙声で嘆き、「それ姉ちゃんに言っちゃダメだよ」と悲しい笑顔で返し、「エピソード0」は終わった。

「この出来事が根幹にあっただけに、湊斗が紬の彼氏になったのがうれしくてたまらないんでしょうし、“姉が湊斗との結婚直前に元カレに会う”という以上の不快感が光の中であったのでしょうね。

 しかし、“エピソード0”を見た視聴者が不安視しているのは、今回のエピソードが“死亡フラグ”ではないか、ということなんです」

『silent』は第5話に至るまで、幾度となく「対比」の演出を用いてきた。たとえば同じセリフであっても、人物や状況が違うとまったくニュアンスが変わる言葉や行動などだ。

 第1話で想が紬に言い放った「うるさい」という言葉がその典型で、高校時代に笑い合いながら交わした会話とまったく同じ言葉が、8年後の2人の再会の際にあまりにも哀切に突き刺さる、という演出に胸を打たれた視聴者も多かったはずだ。

 今回の場合、「トラックに轢かれそうになったところを助ける」という描写が、今後繰り返されるのではないか……と考えられるというわけだ。

「視聴者が抱いている“不安材料”は、現代の想は聴力を失っていて車の音が聞こえない、というのがまず1つ。もう1つは、その“布石”のようなものが第4話に打たれている、という点です」

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