■評定の有無を解く鍵は家康から長政への手紙

 続いて注目すべきは、七月二九日付で家康が長政に宛てた手紙だ。

 長政も前述した通り、評定の主役の一人だ。手紙の日付は小山評定の四日後。長政はすでに西へ向かって進軍中だったが、その彼へ、家康は次のような内容の手紙を送った。

「大坂奉行衆が別心(挙兵)したという知らせを受けました。重ねて相談したいと思うのですが、(長政が)上洛中なのでそういうわけにもいかず、委細は羽三左(池田輝政)へ申し渡しておいたのでよく相談してください」

 家康は三成の挙兵に、大坂の他の奉行衆( 長束正家、増田長盛、前田玄以の三奉行)まで加わった事実を知り、その対策について長政と相談したい旨を告げている。

 ここでのポイントは、家康が「重ねて相談したい」という表現を使っていること。以前にも挙兵問題で相談したことがあるという前提だ。

 つまり、この二九日以前にどこかで諸将合同の評定があったことを前提にした内容だと考えられる。

 前述した通り、この他にも争点はいくつもあり、とてもすべてを紹介する行数はないものの、筆者の印象としては「小山評定はあった」という結論に至っている。

 ただし、「あった」としても、歴史ドラマで描かれるドラマティックな展開だったかどうかは疑問である。

跡部蛮(あとべ・ばん)1960年、大阪府生まれ。歴史作家、歴史研究家。佛教大学大学院博士後期課程修了。戦国時代を中心に日本史の幅広い時代をテーマに著述活動、講演活動を行う。主な著作に『信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた』『信長、秀吉、家康「捏造された歴史」』『明智光秀は二人いた!』(いずれも双葉社)などがある。

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