■スピンオフ制作は既定路線だった?

 そもそも、視聴者から大不評を買っていたにもかかわらず、スピンオフが放送された理由は何だったのだろうか。成田氏は、「作品の人気関係なしに、そもそもスピンオフ制作は決まっていたのではないか」と話す。

「竜星さん、上白石さんをはじめとする、多忙な出演者のみなさんのスケジュールをあらかじめ押さえておかないと撮影はできません。さらに、基本的に朝ドラはセットを組んだらそのセットを使用するシーンを撮りだめし、解体して次のセットを組み立てるというサイクルで撮影しています。

 今回のスピンオフでは、本編に登場した比嘉家、やんばるの共同売店、砂川とうふ店、銀座のフォンターナ、東洋新聞社、鶴見のあまゆと下宿先、なぜか登場人物が吸い寄せられる謎の路地など、お馴染みのセットがほとんど登場していました。スピンオフのためだけにわざわざセットを組み立てなおしたとは考えづらく、もともと制作は決まっていたのだと思います」

 さらには11月11日、『ちむどんどん』視聴者の心をざわつかせる事態が起きた。宮沢氷魚(28)演じる新聞記者で暢子の夫・和彦の父、史彦を演じた戸次重幸(49)の所属事務所が、2023年1月3日に放送されるという『ちむどんどん 総集編 前編・後編』に出演予定だと発表したのだ。

「まだNHKから『総集編』の放送予定が公式発表されたわけではないのですが、戸次さんの事務所の”フライング”ともとれる告知の日程が2023年の正月ということから、『NHK紅白歌合戦』(以下『紅白』)に『ちむどんどん』のテーマ曲『燦燦』を歌った三浦大知さん(35)の出場に合わせてキャストが一緒に出演し、総集編の放送をアピールする可能性は十分に考えられます」

 清原果耶(22)主演の21年度前期作品『おかえりモネ』や、窪田正孝(34)主演の20年前期作品『エール』は、その年の『紅白』で朝ドラ関連の企画にキャストが勢揃いして出演。さらに、どちらも12月28日・29日というタイミングで『総集編』が放送され、『紅白』出演に向けた予習としてバッチリ、という流れだった。

 様々な爪痕を残していった『ちむどんどん』という朝ドラがやりたかったことは一体何だったのだろうか。

「沖縄の本土復帰50周年というタイミングで、沖縄を舞台にした朝ドラを制作したこと自体は、大変意義があることだったと思います。ただあまりにも大風呂敷を広げすぎて、しかもその風呂敷が穴だらけで、最後は急に畳んでおしまいだったことから賛否両論が渦巻くドラマとなりましたが、なんだかんだ“持ってる作品”ではあるんです。『ちむどんどん』本編の放送終了は9月30日でしたが、10月3日から始まった丁寧な作りの朝ドラ『舞いあがれ!』に朝ドラファンの心がようやく浄化され始めた翌週の10月13日というタイミングでスピンオフの制作発表があり、ここでまた“#ちむどんどん反省会”が蒸し返されました。

 さらに11月4日、“#ちむどんどん反省会”が流行語大賞にノミネートされるという予想外のニュースで再び蒸し返されたその2日後にBS4Kでのスピンオフの放送が控えていたなど、ようやく鎮火しそうなところにわざわざ油を注ぐような話題が投入され、なかなか忘れさせてくれないことが続きました。そして正月の総集編放送が本当なら、ある意味、悪運の強~い作品だと言えるんでしょうねぇ……。

 神木隆之介さん(29)主演、浜辺美波さん(22)がヒロインの次回作・23年前期作品『らんまん』には期待しています。『ちむどんどん』での視聴者の声をNHKがどう活かすのか、注目したいですね」

 今後、『ちむどんどん』は、朝ドラ史を語る上では欠かせない作品になりそうだ――。

成田全(なりた・たもつ)
ライター。ドラマ、映画、芸能など、さまざまなジャンルの知識を横断して活躍しており、ドラマのレビュー、インタビューや書評の執筆も数多く手がけている。

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