■黒崎の見せる絶妙なバランス

 黒崎が定期的に会っている大人は何人か存在する。例えば、桂木が経営する甘味処の店員でありながら、助手的な仕事をしている早瀬(中村ゆり/40)だ。シロサギの情報を集めて黒崎に伝えたり、黒崎が上海へ飛んだときは通訳兼相棒のような立場で接していたが、桂木の指示であることは明白で、黒崎が心を許すことはない。

 ただ、桂木の思惑を早瀬が上手にパッケージして伝えてくれることで、黒崎の尖った気持ちを丸く収めているのがいい。早瀬は原作では男性なのだが、ドラマでは女性をキャスティングした良さが出ている。

 また、仕事の相談をしている白石(山本耕史/46)も定期的に会っている人物だ。シロサギとして優秀で隙のない仕事をするが、桂木とも面識があり、桂木の強さ、怖さを知っているリアリストだ。

 だから、黒崎が桂木の目を盗んで何かしようとすると警告するし、黒崎を手伝いながらも実は見張っているようにも感じられる。御木本を追い詰め、真の宿敵を見つけようとする黒崎の疑問にはあいまいな態度を取り、宝条(佐々木蔵之介/54)の名前を出されたときは、気づいてほしくなかったような複雑な顔をしていた。それは、白石の優しさなのだが、黒崎には伝わらないのがもどかしい。

 早瀬も白石も、黒崎にとってあくまで自分の目標を達成するために利用しているに過ぎない。当初の目標にブレることなく真っすぐに向かう姿は演じる平野に重なる。成功してほしい、どうか無事でいてほしいと願ってしまう。
(文・青石 爽)

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